教皇フランシスコ死去=貧者支援、初の南米出身=ブラジルとも深いつながり

ローマ教皇のフランシスコ1世が、現地時間の21日朝、亡くなった。88歳だった。法王は昨年から体調を崩し、長期入院もしたが、退院。復活祭には会衆の前にも姿を見せたが、脳血管障害(AVC)を起こし、この世を去った。フランシスコ法王はアルゼンチンのブエノスアイレス司教区を拠点として活動していた時、南米出身者初の教皇に選ばれ、ブラジルとの結びつきも強かった。
2013年3月12〜13日、同月28日に退位することを決めたベネディクト16世に代わる教皇選挙(コンクラーヴェ)が行われた。当初、聖州司教区のオジロ枢機卿が有力候補と目されていたが、5度にわたる投票の末、欧州大陸出身ではない初のローマ法王となったのはホルヘ・マリオ・ベルゴリオ枢機卿だった。同枢機卿が既に76歳と高齢であったことなどから、この結果は驚きを持って迎えられた。(1)
ベルゴリオ枢機卿の就任前の評判は、「アルゼンチンの軍政に近い立場をとった」「同性愛者に対して反対の立場」と同国内からも懸念の声が上がっていた。だが、フランシスコ1世を襲名した後の教皇の行動はそれとは対照的な評価を受けた。(2)
法王は貧しい人たちにも積極的に近づき、しばしば、「庶民の教皇」と称された。また、同性愛に関しても、カトリック教会内の教義を変えることなどはしなかったものの、同性愛者の入信には寛容で、「シビル・ユニオン(法的なパートナーシップ)の法整備を整えるべき」との発言を行うなど、これまでの教皇に見られなかった言動を行い、21世紀に合わせた改革派との見られ方もした。(3)(4)
ブラジルは2013年の就任後に教皇が最初に訪れた国で、当時のジルマ大統領や当時前大統領だったルーラ氏と良好な関係を築いた。特に、ルーラ氏が2018年にラヴァ・ジャット作戦で有罪となり、実刑に服した際は「証拠もなく有罪にされた」と語り、ルーラ氏が2022年の大統領選に当選した後も、「ルーラ氏の裁判は虚報から始まった」との言動を行っている。(5)(6)
ボルソナロ前大統領に関する言及は少なかったが、2022年に名を伏せたまま、「神よ、ブラジルを嫌悪と不寛容と暴力から守りたまえ」との発言を行い、物議を醸している。ボルソナロ氏もアマゾンや先住民族の保護を訴える法王には会おうともせず、批判を繰り返していた。(7)
だが、前大統領は教皇の死に際し、腸閉塞に伴う手術後で入院先のブラジリアの病院から追悼メッセージを送った。この中でボルソナロ氏は、「単なる宗教指導者ではなく、千年以上にわたる伝統を継承し、文明を築いた精神的価値観の守護者」で「ブラジルと世界にとり、団結、希望、道徳的導きの象徴であり、教皇の死は信仰を振り返り、不確実な時代の指針となる精神の力を思い出させてくれる」と語っている。(8)
ルーラ大統領は21日、「人類は他者を尊重し、受け入れる声を失った。教皇はキリスト教の教えの根幹の愛、寛容、連帯を広めてきた」とし、7日間の服喪を大統領令で宣言した。ルーラ大統領とジャンジャ夫人は26日にローマで行われる教皇の葬儀に参加する予定だ。(9)
次期教皇を決めるためのコンクラーヴェは近日中に行われるが、ブラジルからは7人の枢機卿が参加することになっている。また、フランシスコ法王の逝去に伴い、27日に予定されていた、2006年に15歳で亡くなったイタリアの奇跡の少年カルロ・アクティスさんの列聖式がキャンセルされた。同氏の列聖式に参加するためにイタリアに赴いていたブラジルの青年たちは法王の死に驚くと共に、「復活を信じる」との信仰告白を行い、法王の葬儀に参列する意向を表明した。(10)