site.title

ボリッチ・チリ大統領がブラジル訪問=双洋街道で南米統合推進へ

2025年4月24日

大統領府でチリのボリッチ大統領(左)を迎えたルーラ大統領(右)(Foto: Marcelo Camargo/Agência Brasil)
大統領府でチリのボリッチ大統領(左)を迎えたルーラ大統領(右)(Foto: Marcelo Camargo/Agência Brasil)

 ルーラ大統領は22日、大統領府にチリのガブリエル・ボリッチ大統領を迎え、公式会談を行った。両国は司法・公安、防衛、科学技術、文化、漁業・水産養殖、農業・畜産業、人工知能など多岐にわたる分野で、計13件の協定および覚書に署名したと同日付フォールン誌など(1)(2)(3)が報じた。
 今回の首脳会談は、1836年にブラジルとチリの外交関係が樹立されたことを記念する「友好の日」である4月22日を祝うものだ。同記念日はルーラ氏が24年8月にチリを公式訪問した際に制定されたもので、両国間で祝うのは、今回が初めて。
 ルーラ氏は南米の統合と協力の重要性を強調し、「我々は一国では弱い。連携することで強くなれる」と述べ、地域全体の貧困解決に向けて、隣国との連携が不可欠であることを訴えた。
 会談では、両国間を結ぶ重要なインフラプロジェクトである「双洋街道(Corredor Bioceânico)」の進捗も議題に上った。このプロジェクトは、大西洋にあるブラジルのサンパウロ州、パラナ州、サンタカタリーナ州の港と、太平洋にあるチリのイキケ、メヒジョネス、アントファガスタの港を繋げるものだ。ルーラ氏は、「この街道の完成が両国間の貿易や人々の交流を一層加速させる」と語り、自身の任期中の2026年までにインフラ整備が完了する見込みであることを確認した。
 ボリッチ氏は会談後の記者会見で、経済を中心とする世界的不確実性の中で、南米諸国間の友好関係と、民主主義・多国間主義・自由貿易といった共通の価値を守るための協力の重要性を訴えた。また、チリは貿易の政治的利用や対立に反対し、特定の陣営に偏らず、多様な国・地域との関係構築を通じた戦略的自律性を重視すると述べた。
 ルーラ氏もこの立場に賛同し、「冷戦を望まず、米国とも中国とも等距離の関係を築きたい」とし、「選択するのは企業家だ。私は全ての国と交渉し、売買し、連携したい」と強調した。
 両首脳は、両国間の貿易関係強化を目指し、全国工業連合(CNI)本部で開かれた「ブラジル・チリ経済フォーラム」にも参加。ルーラ氏は開会式で、「我々が目指すのは、国民が豊かな生活を送り、生産性の高い社会を築くことだ。それを実現するためには、科学と技術へのアクセス、そして人間の知恵を活かすことが重要だ」と述べた。ボリッチ氏もそれに同意し、「良いビジネスとは双方の国が利益を得るものであるべきだ」と語り、双方の利益を尊重する貿易・交流の重要性を強調した。
 ルーラ氏は社会政策の効果についても触れ、特に貧困層の所得向上に関して強い信念を表明した。「最も貧しい人々の収入は過去2年間で10・7%増えた。これが、ブラジルとチリの間の観光業や経済活動の活性化にも繋がっている」と述べ、社会的な恩恵が経済全体に波及する仕組みを強調した。
 また、「お金が流通し始めると、人々は旅行をし、消費をし、経済が動き始める。これこそが私たちの目指すべき社会だ」と語り、ポジティブな経済循環を作り出すことの重要性を訴えた。
 だが、両国間で協力関係がある一方、ルーラ氏とボリッチ氏は重要な国際問題において見解の相違を見せている。ルーラ氏は、米国がベネズエラのマドゥーロ政権に科している制裁に批判的で、より融和的な姿勢を取っているのに対し、ボリッチ氏はベネズエラにおける人権侵害を強く批判。また、ボリッチ氏が南米諸国はロシアのウクライナ侵攻を明確に非難すべきだと主張しているのに対し、ルーラ氏は両国間の交渉と合意による解決を支持している。


各地で教皇偲ぶ追悼ミサ=大統領や3権の長葬儀へ前の記事 各地で教皇偲ぶ追悼ミサ=大統領や3権の長葬儀へ中銀「世界経済に減速リスク」=金融引き締めの意義強調次の記事中銀「世界経済に減速リスク」=金融引き締めの意義強調
Loading...