ブラジル司法=米国の政治圧力に反発=前大統領三男に捜査要請=水面下では当局協議開始

アレッシャンドレ・デ・モラエス最高裁判事は26日、連邦検察庁の要請を受け入れ、米国滞在中のエドゥアルド・ボルソナロ下議(自由党・PL、休職中)に対する捜査開始を連邦警察に命じた。エドゥアルド氏が米国政府や米国議員などに働きかけ、ブラジル最高裁に制裁を加えさせようとしていることを検察庁は問題視していた。同日付フォーリャ紙(1)が報じている。
捜査開始要請は連邦検察庁のパウロ・ゴネ長官が行ったものだ。それは、エドゥアルド氏が米国からブラジルの司法制度に反する行動をとっているためで、複数の罪状について捜査を行うよう求めた。
ゴネ長官は、エドゥアルド氏は威嚇的な口ぶりを伴う形で、父であるボルソナロ前大統領に対する刑事訴訟に対する妨害行為を行ったとしている。同長官によると、エドゥアルド氏は米国の企業家や米国の連邦議員と協力し、検察庁や連邦警察、そして最高裁、特にモラエス判事に対して、制裁措置をとるよう仕掛けているという。(2)
同長官はその目的を、米国の連邦議会にブラジル司法に対する制裁を与えるよう働きかけることで、父ボルソナロ氏に対する刑事訴訟の捜査を妨害することであるとし、「強制」「犯罪捜査妨害」「民主的な法支配の廃止」の犯罪に抵触している可能性があるとしている。
この捜査要請は、米国のマルコ・ルビオ米国務長官が21日に米議会の公聴会で、グローバル・マグニツキー法に基づきモラエス氏に制裁を発動する「可能性が非常に高い」と述べた5日後に提出された。27日付G1サイトは、ルビオ米国務長官のこの発言を受け、ブラジル政府は米国当局との水面下の非公式協議を開始したと報じた。この法律は、人権侵害や汚職に関与した外国人を処罰することを可能にするもので、同演説はブラジル外務省に不快感を与え、ブラジルへの内政干渉の試みとみなしているという。
その制裁とは、具体的にはモラエス判事のビザを取り消して米国への入国を不可能にすること、さらに同判事が米国に持つ口座(資産)を凍結することだ。米国側はこれらのことを行う根拠として、エドゥアルド氏が訴えている「モラエス判事が法を濫用して前大統領や軍の高官らを政治的に迫害しようとしている」という点を挙げている。
ゴネ長官は、エドゥアルド氏が3月から下議を休職して米国に滞在している理由を、他国からの圧力を利用してブラジルの司法や警察に圧力を与えるためと見ている。モラエス判事からの捜査開始命令により、今後は、エドゥアルド氏のSNS上の言動は全て連邦警察の監視下に置かれ、それを裏付ける言葉が浮上しないかを見張られることになる。
エドゥアルド氏は検察庁の捜査開始要請について、「私の発言のトーンは変わらない。検察庁はいつも、政治的に反応してきた。ブラジルには例外的な状況があって、司法は依頼人次第で捜査は隠れ蓑次第なのだ」と発言している。(3)
だが、26日付メトロポレスは、モラエス判事や他の最高裁判事、検察庁長官らへの制裁が行われたところで、それがクーデター計画疑惑の裁判の流れを変えることはないだろうとの見方を、トランプ政権の関係者たちも行っていたと報じている。
それによると、米国当局も、ボルソナロ氏は少なくとも短期間は刑務所に入らなければならなくなるだろうと見ているという。短期間としているのは、来年のブラジル大統領選でルーラ氏が敗れ、次政権が恩赦を使ってボルソナロ氏を釈放させるだろうとの見方があるためだという。(4)
エドゥアルド氏の罪状に関しては、下院労働者党(PT)リーダーのリンデンベルギ・ファリアス下議が27日、エドゥアルド氏が公開したビデオや投稿、米国当局関係者との対談その他、同件に関して集めた情報をまとめた報告書を連警に提出する意向を表明。エドゥアルド氏が行っていることは1月8日の三権中枢施設襲撃事件以上に深刻との見解も表明している。(5)