site.title

金融取引税=議会と財相が真っ向対立=下院議長が代案要求するも=ムーディーズ評価下げる

2025年5月31日

アルコルンブレ、モッタ両院議長(Reproducao)
アルコルンブレ、モッタ両院議長(Reproducao)

 22日の予算凍結(財政支出削減)発表時に同時に発表されて以来、諸方面から反発や批判が起きている金融取引税(IOF)に関し、連邦議会が10日以内に代案を出すよう強く求めたのに対し、フェルナンド・ハダジ財相が引き下がらず、対立状態となっている。この不安定な財政状態を受け、格付け会社ムーディーズは30日、ブラジルの評価を「ポジティブ」から「安定的」に引き下げた。

 連邦議会は、連邦政府に対して10日以内にIOFに代わる収入案の提出を求めた。ウゴ・モッタ下院議長(共和者・RP)は、IOFに関しては「議員全体に強い不満感がある」「歳入増加のために、国にダメージを与えるような増税策を回避する案を求めたい」とした。
 ダヴィ・アルコルンブレ上院議長(ウニオン)は28日の会議の席で、「IOF増税は議会の権限を侵害するもので、議会が大統領令を覆す可能性がある」との見解を示した。(1)
 この「大統領令を覆す」というのは、議会が立法条令プロジェクト(PDL)を行使することを示唆したものだ。G1サイトによると、1999年以降、連邦議会がこれを行使して条令、決議、二国間協定などを覆した例が10件あるが、大統領令を覆した例はこれまでにないという。
 だが、PDLが大統領令そのものを取り下げさせるための威嚇的な役割を果たしたことはあるとされており、今回も、まずはそこが狙いと見られている。
 だが、政治学者のレオナルド・バレット氏は議会側のこの対応に対して疑問を投げかけている。「アルコルンブレ氏の言い分だと、連邦政府がIOFを規制税から収入税に変えようとしており、収入税だからこそ議会を通過させる必要があるとしている。だが、これは政治的な話であり、憲法や行政に関する話ではない」と語っている。(2)
 モッタ、アルコルンブレ両議長は28日夜、ハダジ財相やグレイシ・ホフマン大統領府渉外室長官らと共にIOFに関する会議を行った。この会議はかなり緊迫したものとなったとされ、モッタ議長はこの席上、「議会に協力したくないと言わせないためにも10日以内に代案を出すよう求めた」と語っている。
 これに対し、ハダジ財相はIOF増税が行われなかった場合はさらなる財政支出削減が必要となると語り、代替財源がないまま撤回すれば、政府機能が停止する恐れがある」と答えている。ハダジ氏はIOFの増税撤回に応じる意思はないと伝え、「この措置で見込める200億レアルなしに財政支出目標を果たすことは不可能だ」と語っている。
 連邦政府の見解でも、IOF増税で損を被るのは大企業と高額納税者のみで、国全体への影響は限られたものになるとして、ハダジ財相の案を支持。IOF増税撤廃は不可能との見方を示している。(3)
 他方、元中銀理事のアレッシャンドレ・シュワルツマン氏はIOF増税に関し、「その場しのぎの即興的なものだ。伯国経済を知らない準備不足の素人が焦って生み出したものだ」と厳しい評価を下している。
 議会と連邦政府が財政政策を巡って対立状態になっている中、格付け会社ムーディーズは、ブラジルのアウトルックを「ポジティブ」から「安定的」に引き下げた。ブラジルの格付け自体はBA1に据え置かれたままだが、評価が下げられた理由は「支出の硬直性」が主な原因であるとしている。(4)


イタジャイ港=連邦政府管理下で業務再開=近代化に8・44億レ投資前の記事 イタジャイ港=連邦政府管理下で業務再開=近代化に8・44億レ投資保守派インフルエンサー下議、麻薬密売のいとこについて語る次の記事保守派インフルエンサー下議、麻薬密売のいとこについて語る
Loading...