ルーラが米国に批判対立=モラエス判事制裁方針で=前大統領三男に迫る捜査

ルーラ大統領(労働者党・PT)は1日、米国政府がブラジル最高裁のアレッシャンドレ・デ・モラエス判事に制裁を加えようとしていることや、連邦政府にモラエス判事に関する書簡を送りつけてきたことに対し、強い不満を表明した。同日付G1サイト(1)が報じている。
これは、ルーラ氏が、ブラジル社会党(PSB)のジョアン・カンポス新党首の就任イベントに出席した際に発言したものだ。
大統領はそこで、「米国はモラエス判事を起訴したがっている。それは彼が、あの国で1日中、ブラジルに敵対する行為を行っているブラジル人を逮捕したがっているからだ」として、米国ではなく、ブラジルの問題であるという認識を明らかにした。
ルーラ氏は続けて、「米国が何かを否定してブラジルの司法制度を批判したがるとは一体どういうことなのだ? 私はブラジルの司法制度を否定したことは一度もない。国内で野蛮な行為が多数行われているのにも関わらずだ。今の世の中、戦争をして多くの人を殺している国があるというのに、なぜブラジルが批判されなければならないのだ」と戦争当事国と比較して、ブラジルはまともだとの論陣を張った。
ルーラ大統領の発言は、連邦政府が5月30日に明らかにした、米国政府から受け取ったモラエス判事の言動に関する書簡に対する返答ともいえるものだ。
法務省によると、それは単なる情報提供のための書簡で、それを受けて法務省が対策を取らなければならないようなものではないという。だが、この「米国での新しい常識」はブラジルの法務省関係者にとっては「異常」と捉えられている。
ブラジル政府は書簡の内容を明らかにしていないが、ニューヨークタイムスの報道によると、米国法務省はモラエス判事が米国拠点のSNSプラットフォーム「ランブル」に対して、米国滞在の使用者のアカウントを封鎖するよう命じたとして批判を行っていたとされている。これはブラジルでのSNSプラットフォームでの言動を問題視されて捜査対象となったブラジル人が米国内に逃亡し、ランブルで同様の言動を行ったことに対してモラエス判事が命じた処分だ。
5月28日には米国のマルコ・ルビオ国務長官が、「米国人に対して検閲行為を行う外国当局や外国公務員は処罰の対象となる」と発言。具体的な処罰例は、対象者が米国に入国する際のビザ発給許可厳重化などで、実効性は疑問視されてはいる。だが、ブラジル政府の関係者の間では「国家の主権を脅かすもの」との強い懸念や批判がある。(2)
米国政府がこのような言動をとっているのは、米国滞在中に休職したボルソナロ前大統領三男のエドゥアルド下議が同国の企業や下院の共和党議員らに働きかけたことが原因とされており、それに対して連邦検察庁やモラエス判事が反応。エドゥアルド氏が捜査対象となったことで新たな火種が生まれている。
連邦警察によるエドゥアルド氏への捜査は進んでおり、2日午後にはPT下院リーダーのリンジベルギ・ファリアス下議が連警に赴いて証言を行った。また、ボルソナロ前大統領は5日午後、エドゥアルド氏に関する捜査のための事情聴取を受けることになっている。(3)(4)