フランス訪問＝口蹄疫清浄国の認証式も＝メルコスルとの貿易協定は

　【既報関連】フランスを訪問中のルーラ大統領が6日、国際獣疫事務局（WOAH）から、ワクチン接種なしで口蹄疫の清浄状態にあることを認める認定証を受け取った。ルーラ氏とマクロン大統領の関係が良好であることや、両者が互いに関心を持つ内容が山積していることもあり、ロシアとウクライナの戦争やガザ地区でのイスラエル軍による虐殺、南米南部共同市場（メルコスル）と欧州連合（EU）の間の自由貿易協定（FTA）その他、世界的な関心事についても話し合われ、中身の濃い訪問が続いている。

　13年ぶりとなる現職のブラジル大統領のフランス訪問は、マクロン大統領がブラジルを訪れた昨年3月からの約束だった。環境問題にも関心を持つマクロン氏はルーラ氏と共に法定アマゾンを訪問し、ブラジリアでのイベントにも参加。環境や教育、エネルギー転換などに関する二国間合意への署名など、全ての日程を笑顔でこなし、ルーラ氏もフランスを訪問するよう求めた。
　両国の外交政策の専門家は、両大統領の関係は国際的な影響力に関する賭けであると共に、両国が抱える国内危機に対処するための実際的な戦略と見ている。一例は、トゥール大学の政治学教授でパリ政治学院ラテンアメリカ・カリブ海地域観測所共同所長のケビン・パルテネ氏の、「両国は互いを必要としている」との表現だ。（1）（2）
　ブラジルがフランスに求めているのはメルコスルとEU間のFTA承認と国連安全保障理事会での改革キャンペーンに向けた支援で、フランス側にも独自の思惑がある。そのことは、ルーラ氏が出立前に「マクロン大統領と会談し、世界的な関心事について協議する」「実業家とも会談し、ブラジルをフランスの実業家に売り込み、さらなる投資や民間提携に誘致できるかを検討したい」と語ったことなどからも窺える。
　ルーラ氏とその一行のフランス到着は現地時間の4日午後で、5日朝の歓迎式典後は、マクロン大統領との会合や昼食会の他、両国の実業家や欧州諸国のリーダー、パリ市長、同国在住のブラジル人達との会談も持たれた。（3）（4）
　また、6日はWOAHの認証式典やブラジル／フランス経済フォーラムに参加。パリ第8大学とフランス・アカデミーでの名誉博士号授与式も行われた。ルーラ氏は、フランス・アカデミーが公式セッションで表彰した20人目の国家元首となる。（5）（6）（7）
　なお、ルーラ氏は5日の記者会見で、ブラジルが下半期にメルコスルの議長国を務めることに言及し、「FTAの合意締結を見ずに議長国を退任することはできない。合意締結のために心を開いて欲しい」とマクロン氏に要請した。（8）（9）
　トランプ米大統領が導入した関税政策がフランス国内の抵抗を弱め、FTA締結を後押しするとの声もある中（10）、農業生産者からの反発が大きいフランスの大統領であるマクロン氏の対応が注目されている。
　マクロン氏は5日、メルコスル諸国がEU域内と同じ基準を採用し、EU域内の生産ルールを輸入製品に適用するミラー条項やセーフガード条項をFTAに盛り込んでくれれば、合意は年内に成立するとの見解を表明。（11）（12）ルーラ氏は6日、ブラジルやフランスの農業生産者と話し合う準備があるとマクロン氏に伝えたことを明らかにした。また、貿易関係は互いが売り買いする関係を作り、バランスをとる必要があるという考えも明らかにした。
　ルーラ氏は潜水艦開発計画についても協議する他、8日にはモナコでのブルーエコノミーに関するイベントに参加。9日は国連の海洋会議に出席した後、ブラジルの連邦警察官が事務総長を務める国際警察本部も訪問する。
　なお、今回の訪問は「フランスにおけるブラジル年展」開催中に行われており、5日夜はエッフェル塔がブラジル国旗の色で彩られた。（13）（14）