ルーラ=連邦議会と正面衝突選ぶ=増税却下を最高裁に提訴=「貧困層保護」主張して

【既報関連】連邦議会が金融取引税(IOF)の増税に関する大統領令を却下したことを不服とし、ルーラ大統領が最高裁に訴えることを決めた。これが三権の関係をさらにこじらせることになるのではと、懸念の声が上がっている。
IOF増税に関する大統領令は、6月25日に下院、上院が立て続けに行った全体投票で圧倒的な票差で却下された。IOFの増税は5月22日に公表された時から強い反発を招いていたが、フェルナンド・ハダジ財相は「不正を解消するための政策」とし、増税導入を譲らなかった。
ルーラ大統領は、1992年以来初となった大統領令の却下を不服とし、最高裁に訴えることを決めた。政府側は「代替案を出さずに連邦政府の収入案を却下するのは違憲に当たる」としており、既に連邦総弁護庁(AGU)が財務省と相談の上、最高裁に訴える手続きに取り掛かっている。(1)
IOFの増税却下で連邦政府は100億レアルに及ぶ収入確保を強いられており、連邦議会側が望む支出削減についても、「社会保障などの支出に影響が出ることで、政府自体や社会システムの機能が止まりかねない」ことを強く懸念している。
最高裁には一足早く、社会主義自由党(PSOL)がIOF増税却下は違憲であると訴えている。
他方、IOF増税が却下されたことを受け、ルーラ大統領はIOF増税は「貧困層を守るための政策」であることを再強調し始めている。
ルーラ氏は6月27日、トカンチンス州でのイベントに参加した際、演説で「私は皆のために国を統治しているが、私の味方は労働者をはじめとする中流階級だ。だから、連中は私のやり方を嫌うのだ」と主張。さらに、自身が月収5千レアル以下の人たちの所得税免除の法案を出したことも加えて「税金を支払うのは月末に源泉徴収された給料を受け取る人達だ。だから彼らは払いたくないのだ」と主張した。(2)
連邦政府は、IOF増税が却下された背景の一つには高所得者や大企業などが主な対象となることへの議会の懸念があると解釈している。
連邦政府がIOF増税のための大統領令却下に関して最高裁に訴える意向を固めたことに、連邦議会が早速反発を示している。ウゴ・モッタ下院議長の所属政党、共和者(RP)の党首のマルコス・ペレイラ下議は、この行為を「危険なもの」と語り、議会とルーラ政権の関係破綻を恐れている。(3)
連邦議会は、同件に関する救急審議を行う前に議員割当金に関する透明性を求めて規制を行った、ルーラ政権の法相出身のフラヴィオ・ジノ最高裁判事の判断に対して強い不満を抱えている。この問題は、IOF増税却下の背景の一つとされている。
連邦政府より先に提出されたPSOLの訴状の報告官には、ジウマール・メンデス判事が電子的に選出されたが、同判事は最高裁では既に同じ主題を扱う別の訴訟が審理されているとし、ルイス・ロベルト・バローゾ長官に対し、同件の報告官を自身とするか、別の訴訟を扱っているアレッシャンドレ・デ・モラエス判事とするかの判断を求めた。モラエス判事はクーデター計画疑惑の裁判の報告官で、ボルソナロ前大統領との対立でも知られており、野党側の強い反発も予想されている。(4)