AIデータセンター建設加速=莫大な電力消費に懸念

人工知能(AI)の発展に伴い、ブラジル初の大規模AIデータセンターの建設が国内4カ所で進められている。だが、これらの施設を合算した最大電力消費量は、1日あたり最大で約1640万戸の家庭電力使用量と同等の電力を消費する可能性があり、国家のエネルギー需給や環境負荷への影響が懸念されていると3日付G1(1)が報じた。
AIデータセンターは、ChatGPTなどの大規模言語モデルを訓練するために用いられるスーパーコンピューターを収容する施設だ。現在、国内では188のクラウド型データセンターが稼働しており、世界第12位の規模を誇る。こうした従来型施設の最大出力は20メガワット(MW)程度だが、建設が進められているAI向けセンターでは、その数十倍にあたる数千MW規模の出力が見込まれている。
AI用の高性能サーバーは大量の熱を発するため、効率的な冷却が欠かせない。冷却には水を使うケースもあり、環境に大きな負荷を与える可能性があると指摘されている。
米カリフォルニア大学の研究によると、大規模言語モデル「GPT―3」の学習には最大70万リットルの水が使われる可能性があり、ChatGPTの利用でも50回の質問で約0・5リットルの水が消費されるという。研究に携わったシャオレイ・レン教授は「技術による恩恵が環境への負担を上回っているか、社会として判断する必要がある」と指摘している。
こうした背景の下、国内各地でAIデータセンタープロジェクトがすでに始動している。リオ市西部ジャカレパグア地区では、Elea Data Centers社が、AI向けデータセンター4棟を含む複合施設「リオAIシティ」の建設を進めている。このうち1棟はすでに稼働しているが、現時点ではクラウド用途に限定されている。
施設内には研究機関やスタートアップ向けのビルも建設予定。初期出力は1500MW、最大3200MWまで拡張可能で、家庭約600万〜1280万戸分の電力に相当する。25年7月にはエドゥアルド・パエス・リオ市長が同プロジェクトへの支援を表明した。
リオ・グランデ・ド・スル州エルドラド・ド・スル市では、Scala Data Centers社が「スカラAIシティ」を計画。初期出力1800MWから33年までに5千MWへの拡張を見込み、最大で家庭約720万〜2千万戸分の電力消費に匹敵する。冷却には水を使わない閉ループ式オイル冷却方式を採用し、同市ではテクノロジー特区や税制優遇による企業誘致も進められている。
パラナ州マリンガ市とミナス・ジェライス州ウベルランジア市では、RT―One社がそれぞれ400MW規模のAIセンター建設を計画中。各施設は最大で家庭160万戸分に相当する電力を消費する。マリンガ市は機器輸入を円滑にする外国貿易特区の設置を検討しており、同社はグアラニ帯水層から地下水を冷却用にくみ上げ、熱交換後に地中へ戻す方式を採用する可能性があると説明している。
5カ所目となるデータセンターがセアラ州カウカイア市に建設される予定だが、AI向けか否かが明らかにされていないため、試算からは除外されている。Casa dos Ventos社が300MW規模のデータセンター建設を計画しており、将来的には最大576MWへの拡張も視野に入れている。報道によれば、同施設は「TikTok」を運営する中国大手のバイトダンス社が利用する可能性があるとされる。総投資額は500億レアルを超えるとされ、27年稼働開始を予定している。