発電過多でも上がる電気代=家計圧迫する補助金と太陽光
ブラジルは電力の供給量が需要を上回る「過剰生産」のはずなのに、住宅向け電気料金は上昇を続け、家計を圧迫している。背景には、住宅や商業施設の屋根に設置された太陽光パネルなどによる分散型発電の急増、夕方の需要ピーク時に稼働する高コスト火力発電、再生可能エネルギー生産と消費地域の不均衡がある。加えて補助金制度が恒常化し、消費者への負担が直接転嫁されていることも料金上昇の大きな要因だ。その構造的な問題の最新データと専門家の見解を29日付エスタード紙(1)が報じた。
今年に入り、ブラジルの電力供給は需要を上回る状況が続いている。だが、その過剰な供給能力は消費者の電気料金を下げることにつながらない。広範囲消費者物価指数(IPCA)によると、25年1〜9月の住宅向け電気料金は前年同期比で16・42%上昇した。
この矛盾の背景には複数の要因がある。まず、住宅や商業施設の屋根に設置された太陽光パネルなどによる分散型発電が急増したことだ。分散型発電は約2千万人が利用し、日中10〜16時に発電量が集中する。日中の発電量は非常に大きい一方、消費は低いため、国家電力システム運用会社(ONS)は他の発電所の出力を制限せざるを得ず、過剰電力の調整が必要となる。出力制限は発電事業者に経済的損失をもたらす。
逆に太陽光発電ができない夕方から夜間にかけては、ONSは高コストかつ環境負荷の大きい火力発電所を稼働させる必要がある。この高コスト電源には火力以外も含まれ、電力単価は平均の最大5倍に達することも。これにより、電気料金制度の「赤旗1」が適用され、消費者は100キロワット時(kWh)あたり4・46レの追徴金を課される。
リオ連邦大学(UFRJ)の電力セクター研究グループ(Gesel)総括責任者ニヴァルデ・デ・カストロ氏は、供給契約を結ぶディストリビューター経由で電力を利用する一般消費者は、旧型発電所の入札で契約した電力を使用しており、その価格は高めだと説明する。この一般消費者は、住宅の屋根に設置された太陽光パネルを含む多くの補助金やセクター負担をほぼすべて負担しなければならない。
国家電力庁(Aneel)の最新データによれば、25年10月までのエネルギーセクターへの補助金は累計390億レに上り、住宅向け料金の17・58%を占める。24年は489億レ、18年は188億レで年々増加傾向にある。
補助金の内訳をみると、特に「優遇対象電源」向けに118億5300万レ、分散型発電向けに118億1300万レが支出されている。この二つだけで、住宅向け料金の約6%を占める。ジェトゥリオ・ヴァルガス財団(FGV)の研究者パウロ・クーニャ氏は「発電構造自体は多様で効率的だが、その多くは補助金に依存し、制度が恒久化したことで社会全体に負担が生じている」と指摘する。
補助金は低所得家庭向けの割引や全国的な電力アクセス普及のために必要な部分もあるが、正当性が疑問視される負担も混在していると専門家は警告。電力市場分析会社PSRのアナリスト、ラヴィ・フォシ氏は、「制度上の補助金は必要だが、料金には説明の難しい負担も含まれている」と述べた。
分散型発電の急拡大はONSの供給制御にも影響を与えている。日中の過剰電力の調整や、需要ピーク時の火力発電の起動が不可欠になり、8月10日の父の日には需要が減少したにもかかわらず、約90%の発電量が制御され、多くの発電所が停止する事態に。クーニャ氏は「消費がほとんど増えていないのに供給が急増したことが高額な電力料金の主因である」と説明する。
地理的な偏りも料金上昇に影響する。再生可能エネルギーの大半は北東部で生産されるが、消費の多い南東部への送電には限界があり、日中の電力の一部が消費されず浪費される。この非効率もシステムコストを押し上げる。専門家の指摘によれば、電力セクターのほぼ全ての不均衡は消費者に転嫁される。









