外国人幹部の登用急拡大=地政学リスク対応や経営強化で
地政学リスクが企業経営の重要課題となるなか、ブラジルでは外国人幹部の存在感が増している。多様な市場で培われた実務能力に加え、国際的なネットワークや多文化チームを統括する手腕が、複雑化する事業環境への対応力を高めているためだ。事業拡大やガバナンス強化を急ぐ企業の間では、国外経験を持つリーダーを戦略的戦力として位置づける機運が高まっている。26日付の経済紙ヴァロール・エコノミコ(1)(2)が報じた。
国内外の規制が複雑化し、市場環境の不透明感が続くなか、ブラジル企業では外国での実務経験を備えた人材の登用が広がっている。人材コンサルティング大手ロバート・ハーフのエグゼクティブ採用ディレクター、マリアナ・オルノ氏は、国外勤務歴を持つ幹部はガバナンス、コンプライアンス、リスク管理に関する国際基準に精通し、外部環境の分析力を高める傾向があると指摘。こうした人材は、投資家や国外パートナーとの対話に適した企業文化の醸成にも寄与すると分析する。
連邦警察の移民登録システム(SisMigra)の統計によれば、2010〜24年にブラジルでの居住許可を取得した外国人は計180万人に上る。このうち過半数は社会的に脆弱な状況にある近隣の中南米諸国からの移民だが、米国や欧州、アジアの先進国からも一定数が流入しており、全体の10・8%を占めた。
ブラジルは伝統的に多様な背景を持つ移民を受け入れてきたが、昨今の構成は、同国の労働市場において外国人が果たす役割が高度な専門領域へも拡大していることを示唆している。
福利厚生プラットフォームを展開するカジュ(Caju)で最高マーケティング責任者(CMO)を務める米国出身のザッカリー・フォックス氏は、その好例だ。同氏はペンシルベニア大学およびウォートン・スクールで学位を取得後、ベイン・アンド・カンパニーのコンサルタントとして米国、スペイン、インドで5年以上の実務に従事。米LinkedIn本社でB2Bマーケティングに携わった後、ブラジルでは不動産テックのキント・アンダールやRDステーションで経験を積んだ。
カジュ参画後は、グローバル企業での知見を現地の戦略に反映させる一方、ブラジル独自の開かれた関係構築の文化を自身のリーダーシップに取り入れ、組織文化や業務遂行力の向上を牽引している。3年以上の学習を経てポルトガル語を流暢に操るフォックス氏は、自身の価値としてマーケティングの専門性、円滑なコミュニケーションによる組織文化への貢献、そして実務的なマネジメント支援を挙げる。
現在は5万社を超える顧客基盤の拡大に注力しており、外国人幹部にとって「チームの働き方の深い理解」と「信頼関係の構築」が成功の要諦であると説く。
英系フィンテック企業イーブリー(Ebury)のブラジル法人を率いるポルトガル出身のダヴィッド・ブリト氏も、欧州での知見を現地オペレーションに活用している。国際決済を主業とする同社では、経済制裁や貿易協定の変更といった地政学的動向が日々の業務に直結するため、国外経験者の視点が不可欠だという。ブラジルでの収益寄与を高めるべく、顧客基盤の急速な拡大を目指している。
外国人幹部の採用に際しては、単なる外国経験以上に、多文化チームのマネジメント能力、組織内言語への適応力、ステークホルダーとの関係構築力といった実務に即した要素が重視される。トレヴィザン・ビジネススクールのスザナ・スロンゾン氏は、国外で構築された人的ネットワークが、国際取引や上場準備(IPO)のプロセス整備において強みを発揮すると指摘した。
製薬大手キエジ・ブラジルのゼネラルマネジャーを務めるイタリア人のマルコ・ルッジェロ氏は、外国人幹部は異なる市場の事業モデルを組織へ注入し、既存の枠組みを「再定義(チャレンジ)」する役割を担うと語る。2024年にメキシコ法人から着任した同氏は、現地文化の深い理解が不可欠である一方、市場に精通した現地チームとの協働こそが成果の源泉であると説く。
多文化人材コンサルティングを担うタレントスフィアの創業者ルシアネ・ラベーロ氏は、外国人幹部の適性判断において「文化的適合性」や「協働的な姿勢」などの社会情動的能力を重視する。欧米とは異なるブラジル特有の商慣習や組織文化に対応するには、柔軟性や即興力が求められるためだ。ブラジルでの経験を通じ、限られた資源下で成果を生む力や強い回復力(レジリエンス)を獲得し、より成熟したリーダーとして次なるキャリアへ飛躍する事例も多いという。








