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世界的消費拡大で組織肥大化=ブラジルが密輸網の国際的拠点に

2025年11月1日

万華鏡2
CVの支配下にあるペーニャ地区のファヴェーラ(Foto: Marcello Casal Jr./Agência Brasil)

麻薬密売は国内対策だけでは解決しない。世界的なコカイン消費の急増が、ブラジルの犯罪組織の勢力拡大を後押ししている。国連の報告書や専門家によると、特に欧州市場での需要増が、コマンド・ヴェルメーリョ(CV)や州都第一コマンド(PCC)の資金力を強化し、国際的影響力を高めていると10月29日付BBCブラジル(1)が報じた。

コカインの需要は近年、世界的にかつてない水準に達し、特に欧州での消費拡大がブラジルの犯罪組織の勢力を押し上げている。国連薬物犯罪事務所(UNODC)の「世界麻薬報告25年版」によると、2013年から2023年の10年間に、世界のコカイン使用者は1700万人から2500万人へと増加し、15歳から64歳までの人口における使用率は0・36%から0・47%に上昇した。

主要市場は北米、南米、欧州西部・中央地域で、コカインの主要産地であるアンデス諸国から北米及び欧州への直接輸送が圧倒的に多い。欧州では2023年の押収量が北米を5年連続で上回っており、ブラジルはアンデス諸国から欧州への重要な中継拠点として機能している。

UNODCの報告書は、コカイン取引が犯罪組織の資金源となり、関連する暴力の増加を引き起こしていると指摘。特に米大陸では、PCCやCVなどの組織間での暴力が顕著であり、密輸ルートや地域支配をめぐる抗争が絶えない。PCCとCVは、ともに犯罪組織として一定の階層構造を有しつつ、地域支部は独自性を持って運営されることもあるため、「フランチャイズ型」と形容されることもある。

ブラジルは欧州向けコカイン密輸における「橋渡し」の役割を果たしている。コロンビア、ペルー、ボリビアの生産地域と、ブラジル沿岸の港湾を結ぶルートは、サントス港を中心に、パラナグアやイタジャイなどが重要拠点となっており、押収量は2010年の4・5トンから2019年には66トンに急増。

こうした密輸ルートの確立により、PCCは資金基盤を大幅に強化し、ブラジル内および南米地域における犯罪経済を掌握する国際的犯罪組織へと変貌を遂げた。PCCは元々、1990年代初頭に聖州の刑務所内で受刑者らによって結成され、当初は受刑者の権利擁護を掲げていたが、やがて麻薬取引を中心とした犯罪ネットワークへと発展した。

欧州との接点ではイタリアのマフィア組織、特に「ンドランゲタ」との協力関係が確認されており、ブラジル発のコカインが欧州に流通する主要ルートを構築している。航空便や海上コンテナを利用した多様な輸送手段により、ベルギー、オランダ、スペインなどの主要港では大量のコカインが押収され、欧州全体の押収量の約73%を占める。

犯罪組織の国際化は顕著で、CVはボリビアからのコカイン調達に加え、アフリカや欧州の組織とも協力関係を持ち、組織の影響力を拡大している。ブラジル内の消費市場も成長しており、これが暴力と国家の治安対応を巡る負の連鎖を生んでいる。専門家の指摘では、現在の「麻薬戦争」は構造的に失敗しており、需要抑制や教育を中心とした公衆衛生的アプローチへの転換が必要だとしている。

一方、PCCやCVはコカイン密輸以外にも活動を多角化しており、ガスや電気の不正販売、違法インターネットサービス、交通事業などで収益を上げている。特にPCCは欧州向けコカインルートの支配を通じて利益を拡大し、CVは国内での地域支配を軸に資金を得ている。北部・北東部ではアマゾン流域を通じた密輸ルートの確保を巡る抗争も絶えず、地域紛争と犯罪組織の勢力拡大が並行して進行している。麻薬取引は氷山の一角にすぎず、地下経済の裾野は社会の隅々にまで広がりつつある。


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