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植物状態の妻救った善意の連鎖=ICU機で米国から帰国治療

2025年10月29日

万華鏡1−1
植物状態のファビオラさんを支える夫ウビラタンさん(28日付CBNサイトの記事の一部)

【既報関連】米国で突然の病により植物状態となっていたブラジル人女性ファビオラ・ダ・コスタさん(32歳)が今月中旬、友人らの支援によりICU(集中治療設備)付きの航空機で無事に祖国に帰還した。現在はミナス・ジェライス州ジュイス・デ・フォーラの病院で、無料の統一保健システム(SUS)下で治療を受けており、家族は今後、リオのリハビリ専門病院への転院を目指していると28日付CBNなど(1)(2)が報じた。

本紙18日付(3)や23日付(4)で報じたように、ファビオラさんは昨年9月、米フロリダ州オーランドの自宅で突然の病に倒れ、救急搬送された。蘇生措置の過程で3度の心肺停止を起こし、肺に穿孔が生じた。脳への酸素供給が一時的に途絶えた結果、重度の脳損傷を負い、植物状態が続いている。米国の病院に8カ月間入院し、費用の一部は医療保険で賄われたものの、総負担額は数百万レアル(数千万円規模)に達した。

夫のウビラタン・ロドリゲスさん(41歳)は、退院後の介護を一手に担い、自宅を医療機器付きの治療室に改装。気管切開による呼吸補助、経管栄養、理学療法などを日々行ってきた。経済的負担が重くのしかかる中、SUSの下で治療を継続したいという願いから、ブラジルへの帰国を決意。当初は、莫大な航空搬送費用に代わる手段として、改造キャンピングカーによる陸路移動を計画していた。米国から中南米11カ国を縦断し、約6800キロを50日かけて走破する、前例のない旅となる予定だった。

だが10月に入り、友人らが支援を申し出たことで事態は好転した。ICU付き航空機による運搬にかかる資金約100万レアル(約2830万円)のうち、不足分を3人の支援者が拠出してくれたおかげで、航空搬送の手配が実現した。

一方で、実際に帰国に使われたプレイベートジェットは個人所有のもので、提供者が経費を請求しなかったため、集まった資金は今後の治療費などに充てる方針だという。ファビオラさんは20日夜、ジュイス・デ・フォーラ近郊のゴイアナ空港に到着。移動式緊急医療サービス(Samu)の支援を受けてアナ・ネリ病院に移送され、精密検査を受けた後、SUS支援下で継続的な治療を受けている。

万華鏡1−2
ファビオラさんを乗せた航空機が20日、ブラジルに到着した(22日付G1サイトの記事の一部)

ウビラタンさんは「航空搬送は夢のようだった。不可能と思えたことが、多くの人々の善意によって現実になった」と振り返り、支援者への感謝を口にした。

ウビラタンさんと3人の子どもたちは引き続き米国に滞在しており、米国生まれの5歳の末娘に関する旅券その他の書類手続きを終え次第、ブラジルに戻る予定だという。

ファビオラさんは現在入院中で、母親が付き添いながら治療経過を見守っている。

ブラジルではSUSを通じて無償で治療が受けられるが、米国には同様の制度が存在しない。ウビラタンさんは「SUSの病院で手厚い治療を受けている。職員の皆さんは本当に献身的で感謝している」と述べた。

加えて、「だが、現在入院しているアナ・ネリ病院は急性期の対応を主とする施設であり、回復期のリハビリ治療には限界がある」とも語り、今後はリオ市のリハビリ専門機関サラ・クビチェッキ病院への転院を希望しているという。

夫妻はともにジュイス・デ・フォーラ出身で、2019年にアメリカンドリームを夢見て米国移住。オーランドではファビオラさんはネイリストとして働き、夫はトラック運転手として生計を支え、安定した家庭を築いていたが、突然の病が家族の生活を一変させた。

ウビラタンさんは「この経験を通じて、困難に立ち向かう力と希望の大切さを学んだ。友人だけでなく、見ず知らずの人々までも、何の見返りも求めず手を差し伸べてくれる姿を目の当たりにし、その支えの大きさを実感した」と語り、「ファビオラがいつかきっと以前のように戻ってくれると信じている」と結んだ。


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