COP30宿泊費高騰問題=ホテル側は価格説明を拒否

【既報関連】第30回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP30)開催まで100日を切る中、各国政府代表団や市民代表を含む多くの参加予定者が、依然として宿泊先を確保できない深刻な状況に直面している。190カ国以上の国家元首、閣僚、外交官、市民の代表者ら総勢約4万5千人が集まる大規模イベントだが、1月8日付ポルタルINサイト(1)によれば、開催地パラー州ベレン市のベット数は1万8千しかない。
同市では宿泊料金が高騰し、普通の二人部屋で1泊2万7千レ(約72万円)に達する例も。法務省が調査に乗り出したが、ホテル各社は「需要と供給」「契約の機密保持」を理由に説明を拒み、事態は膠着状態にあると5日付フォーリャ紙(2)が伝えた。
法務省国家消費者局(Senacon)は6月以降、ベレン市のホテルに価格の透明化と通常料金との差異についての説明を求めているが、多くの業者は情報は機密扱いと回答を拒否。同紙が入手した文書によれば、10社が部分的または一切回答せず、複数のチェーンが「情報は戦略的かつ機密性が高く、個人情報保護法によって保護される」との文書を提出し、情報開示を拒否した。
その一方で、2012年の火災で損傷し、長年放置されていた旧税務署庁舎が、連邦政府による2千万レの特別融資を受けて高級ホテルに転用された事例も注目されている。州政府は当該建物をホテルチェーン「チボリ」に提供し、5つ星ホテル建設を支援したが、同ホテルは期間中の平均宿泊費を一泊1万5千レ(約40万円)、最上級スイートでは20万6千レ(約552万円)に設定し、物議を醸す。ホテル側は宿泊インフラ不足を理由に高額料金を正当化し、「契約上の機密性」を理由に詳細説明を拒否した。
伯国ホテル業者会(ABIH)のパラー州支部長アントニオ・サンチアゴ氏は「価格設定は古典的な需要と供給の法則に基づくものだ」と主張している。
ベレンのインフラ不足は開催地に決定された当初から懸念されていた。ルーラ政権には、会議の一部を他都市に移すよう求める書簡が25カ国から提出された。その書簡では「COP全体をベレンで開催するのであれば、最低限の物流基準を満たすべき」と明記されており、開催地としての基本条件を満たす必要性が強調されている。この問題を受けて、国連気候変動枠組条約事務局(UNFCCC)も緊急会合を開催した。
COP30議長のアンドレ・コレア・ド・ラゴ大使は、宿泊費高騰を危機の主因と認めつつも、開催地変更の可能性は否定。「ホテル側が危機の深刻さを理解していないのかも。COPのベレン開催に代替案はない」と強調した。
連邦政府の対応に対しても批判が高まっている。4日付エスタード紙(3)によると、環境保護市民団体のマルシオ・アストリーニ事務局長は「宿泊不足と価格高騰は会議の進行を危うくする根本的問題であり、ベレン市ではなく、連邦政府の管理不備に起因する」と強調。
ラゴ大使も、宿泊費高騰が国際的な参加を阻む深刻な障壁であるとの認識を示し、連邦政府、特に大統領府に対し、早急な対処を求めている。
連邦政府は対策として公式宿泊予約プラットフォームを立ち上げたものの、予約困難は解消されず、代替策として用意された船舶の客室も、一部では1泊3300レ(約8万8千円)と高額で、途上国参加者にとって実質的な障壁に。アストリーニ氏は「政府自ら高額価格を設定しており、支援を必要とする国々への配慮が著しく欠けている」と強く批判。
国連は財政支援を必要とする国に対し旅費補助を行っているが、通常150ドル(826レ、2万2千円相当)程度にとどまり、船舶宿泊費は大きく上回っている。こうした構造的な矛盾は、COP30の公平性と実効性に対する国際的な信頼を揺るがしかねないとして、深刻な懸念が広がっている。