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世界の人気作家・川口俊和さん=ブラジル3都市で講演へ

2025年9月11日

著書『コーヒーが冷めないうちに』のポルトガル語版を手にもつ川口俊和さん
著書『コーヒーが冷めないうちに』のポルトガル語版を手にもつ川口俊和さん

 全世界で500万部突破の「コーヒーシリーズ」第一弾!『コーヒーが冷めないうちに』(ポルトガル語版Compre Antes que o café esfrie)の著者、川口俊和さん(54歳、大阪府出身)が12日から15日にかけてマナウス、サンパウロ市、カンピーナスの3都市で講演会と対談を行う。それに先立つ9日、講演会を主催する国際交流基金サンパウロ文化センターで取材に応じた。

 川口さんは「僕は演劇をずっとやってきた人間で、老舗という字を『ろうほ』と読んでしまうぐらい小説には縁がなかった。それなのに最初に書いた小説が、言葉や国境を超えてこんなに読まれ、ブラジルまで来ていることに信じられないという気持ちです」と初来伯の感想を語った。

 本作は、川口さんによる小説・映画シリーズの第一弾。ある席に座るとコーヒーが冷めるまでの短い時間だけ過去に戻れる不思議な喫茶店「フニクリフニクラ」を舞台にした物語。過去に戻っても現実は変えられないが、後悔を抱えた人々が過去の自分と向き合い、心に区切りをつける様子が描かれていく。2018年に有村架純主演で同名で映画化(塚原あゆ子監督、ポ語タイトルCafe Funiculi Funicula)された。小説の続編も出版され、世界的な人気シリーズとなっている。

 川口氏は劇作家としてキャリアを重ねて演劇としてこれを上演、2015年に同作を小説化。作品は55言語も翻訳契約がされ、欧米やアジアを中心に幅広い世代の読者を獲得している。英米仏伊ポーランドなどで有名出版賞を受賞したりノミネートに入った。特にイタリアでは2022年、ベストセラーリストに161週連続でランクインするなど世界中で読まれている。

 2021年11月にはハリウッドで映像化契約がされ、いずれ映画かドラマが制作される予定だという。人の心の奥に潜む切なさや希望を描き出す筆致は、文化や言語を越えて共感を呼んでいる。

 川口さんは「イタリアではパンデミックの時にすごく売れて、読んだ人が友達にプレゼントするという循環で広まったという話を聞きました。辛い想いを抱えたり、『楽しかった過去に戻りたい』という気持ちや、過去の自分の行動に後悔するなどの感情は世界共通なのかも」と推測している。

 12日にはアマゾナス州マナウスのアマゾナス連邦大学で開催される「第15回ブラジル日本研究国際会議」のパネル討論に登壇。14日15時からサンパウロ市ヴィラ・マダレナ地区の書店「Livraria da Vila」(R. Fradique Coutinho, 915)で対談1時間、定員55人。

 15日19時からはカンピーナス市の大型書店「Livraria Leitura」(ショッピング・パルケ・ドン・ペドロ内)で対談1時間、定員150人。いずれの会場でも逐次通訳、作品テーマの「時間」や「記憶」を中心に語られ、終了後にはサイン会も開かれる。

 SNS上のイデオロギーによる罵り合いにうんざりしている人、コロナなどの病気や事件・事故で大事な人を亡くした人など、安らぎや癒しを求めている人には心の特効薬になるかも。


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