墨絵で描くセラードの大自然=生命が和紙の上に息づく

ブラジリアに広がるセラードの大自然と、日本の伝統芸術が呼応する――そんな特別な試みが連邦直轄区議会(CLDF)の議会ホールで5日から26日まで公開されている。この「Recortes do Cerrado(セラードの断片)」展は、日本の墨絵(Sumi-e)を通じて、独自の生態系に新たな視点を生む企画だ。その開幕式が12日午後7時に催され、駐ブラジル日本国特命全権大使の林禎二氏をはじめ、環境行政の関係者らが列席する予定。
本展は、芸術家・高野ヒロミ氏が企画してブラジル墨絵研究所(Instituto Sumi-e Brasil)が主催。水墨画が持つ簡素かつ深遠な表現力で、セラードの生命が和紙の上に息づく。
代表作「アリクイ」や「セラードのキツツキ」は、素朴な墨の濃淡により大地の逞しさを映し出す。林大使自身も筆を執った「カラカラとイペー」は、鮮やかな黄花の木と猛禽を取り合わせ、ブラジルの自然美を象徴的に表現したもの。さらに「アントア(バク)」などの作品群は、この地に暮らす生きものの儚さと力強さを描き出している。
日伯130周年を機に、両国の芸術文化を結び直す場とも位置づけられている。墨絵の筆致に込められた自然へのまなざしは、地下を流れる水脈や野に咲く小さな蘭といった「見えない自然の声」にも思いを馳せる契機となるだろう。
展示に加え、講演や自然保護区での体験、巡回ワークショップなど、多角的な活動も計画されており、教育的な広がりをもたらす点も注目される。入場は無料。芸術を通じた自然との対話に触れ、セラードの新たな表情を感じ取る機会となりそうだ。
【会場】Câmara Legislativa do Distrito Federal, St. de Industrias Graficas - Brasília, DF, 70094-902