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マイゾウ・メーノス(まあーまあー)の世界ブラジル(34)=サンパウロ 梅津久

2025年9月23日

第26話―お客様は「二の次、三の次」

日本には昔から「お客様は神様、仏様」と云って、どんなことがあっても、まずはお客様を大事にする習慣があります。最近ですと、2020年東京オリンピック誘致で「おもてなし」という素晴らしい言葉が一躍話題になりましたが、ブラジルはどうでしょうか。

ブラジルでまず嫌になるのが、スーパーのレジで待たされる時間の長いこと。レジの数は沢山あるのだが動いているのは1/3。半分も動いていたら良い方である。品物を探し、選んでカートに入れる時間よりもレジで順番を待つ時間が長いというのが普通の光景である。

しかもその待ち時間はちょっとではない。何十分にもなるのだ。たしかに、カートに品物を目一杯入れて買い物する人は多い。それでもレジで働く人の手の動きは、日本のそれと比べものにならない。日本のレジで働くお姉さん(おばさん)の動きは見ていて気持ちよくなるくらいテキパキしている。ブラジルでは「おい!早くやってくれよ。」と言いたくなってくる。

また日本では、ちょっと列が出来だすと、店の中で商品を整理していた人、事務所の人、管理人までレジに飛んできて応援対応してくれる。この光景は日本の文化そのものと思う。

ブラジルでは、まずこんな光景はない。「私の仕事はこれ、あの仕事はあの人のもの、相手の仕事を取ってはいけない!」なのである。

私は気が短い。レジで並びに並び、さらに前の客と店員が会計にてこずっているのを見て、品物のカートをレジのそばに置いて何も買わずにスーパーを出たことが何度かある。今では、スーパーに入ったら、レジの混み具合を見てから、買い物を始めることにしている。

私は訪日する度に用事で銀行に行くが、本当に丁寧な応対をしてくれて、こちらも頭を下げてしまう。銀行に入ると、用事を聞かれ、窓口に案内される。先にお客様がいれば、奥で事務をしていた人がすぐに対応してくれる。数分と待たされることはない。

去年も市役所で、ブラジルで生まれた初孫の戸籍謄本を申請したのだが、申請書を提出し、ソファーに座る暇もなく、呼ばれ手数料を払うと、その隣で、すぐに戸籍謄本を受け取った。たぶん、10分とかからなかったと思う。一緒に行ってくれた従弟も驚いていた。

ところで、ブラジルはどうだろう?銀行も役所も、「なんでこんなに人がいるの?」「この長い列はなあーに?」「えー○時間待ち?」「うそでしょう?」と疑問符ばかり付いてしまう。

管理者も見て見ぬふり。奥からマネージャーと思われる人が、ときどき出這入りするが、素知らぬ顔。

「こちらは普段の仕事をしているだけ、そんなに大勢押し掛けてくるお前達が悪いんだ、だまって順番がくるまで待て」

これブラジル文化?銀行の窓口には飛行場の搭乗口と同じ様に列を整理するバンドがなぜか設けてある。

ブラジルには「Lei das Filas(列の法)」という、サービス業でお客様に対応する窓口(スーパーのレジも同様)で何分以上待たせたら、罰金が課せられる法律が数年前から、各市の条令で定められているが、実態のない法律となっている。

待たせることがブラジルの文化なのだろうか?本当に「マイゾウ・メーノス」の世界である。

わたしは、銀行や役所など待たされる可能性のある所に行く時は、スドク(ナンプレパズル)を持っていくことにしている。いらいらするだけ損、頭の体操の時間に使う。

今日この頃の銀行はATMやPIX(スマートフォンでの即時決済システム)、インターネットバンキングの普及で、店内は閑散としおり、以前のような列を見ることはなくなっている。

日本から来た人の場合、マンション住まいを開始するために、家具を揃えなければならないが、これがまた頭痛の種である。

家具販売店に行くと、店員が両手を擦って、これはこれはと、いたせりつくせりの応対をしてくれる。届ける日や時間も決めて購入し、家に帰ってから早く届かないかなと期待と夢が膨らむ。

「さあ、今日は購入した家具が届く日だ」となっても期待と夢は無残にも打ち砕けてしまう。待てど暮らせど、納入のトラックの姿は見えない。約束の時間が過ぎ、お腹がすいても家を出ることも出来ない。散々待たされて、「今日は駄目か、よし明日店に怒鳴りこんでやろう」と決心したその時、インターフォーンがなる。やっと届いた。

しかし、トラックの運転手らは部屋に運んだだけで、「明日組立の人が来るから」とけんもほろろに帰ってしまう。こちらは梱包もほどけず、翌日もまた、何時になるとも分からない家で待つ辛抱が繰り返される。

家具ならまだ良い。エアコンなどはたまったものでない。届ける人、取り付ける人、壁を壊して配管する人、「あれがない、これが足りないからまた明日!(アテ・アマニャーン)と何日もかかる。

最近ですと、ケーブルTV(NET)や衛星TV(SKY)のサービスも同様。勧誘する時は、いかに自社のサービスが優秀かを宣伝して契約させるが、現場のサービスは謳い文句とはほど遠い。TVが映らない、インターネットが繋がらないなどトラブルが頻繁に発生する。

訪問系のサービスを電話で依頼しても、時間内に来ることはまずない。その間外出することも出来ず、「まちぼうけ」となる。催促し、「料金を払わないぞ!」「消費者団体に訴えるぞ!」とケンカ腰になるのが常である。

インターネットのスピードも、20Mbpsの契約をしているが、通常時で3~5Mbpsしかでず、今日は最悪、1Mbpsもない。サイトのホームページ画面もまともに開かない。

こんな経験は皆さんがされているはずです。サービス業の窓口に行く時は、それなりの覚悟が必要かもしれません。どっちがお客かわからなくなるから。



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