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勝ち負け抗争が家族史アニメに=16日から全伯で上映開始=『Eu e Meu Avô Nihonjin』

2025年9月30日

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勝ち負け抗争が家族の歴史として初めてアニメ映画に――。日本移民の歴史を題材にした長編アニメ映画『Eu e Meu Avô Nihonjin(私と日本人の祖父)』の特別上映会が9月4日、サンパウロ市内のショッピングで開かれた。制作はピンギン・コンテント、配給はH2Oフィルムズ。10月16日の全国公開を前に、文化機関や日系団体関係者が出席し、作品の完成を祝った。

ノボルが学校で家族史を書きとる宿題を出されたことから、それまできちんと話をしたことがなかった祖父と対面する場面から始まる。最初は、祖父の厳しい態度に反撥するが、ノボルは次第に思いもよらない家族史に惹き込まれていく。

最も文化的に西洋とかけ離れた日本からの移民の家族を通して、移民大国ブラジルが抱える世代間の断絶や文化衝突を、アニメでブラジル映画として制作した。原作は、家族の実話を元にオスカル・ナカサト氏が書いた小説『Nihonjin』。2012年のジャブチ賞(ブラジルで最も権威ある文学・出版界の総合賞)を受賞した骨太な作品だ。それを、子供にも届く優しい語り口に翻案したもの。

ナカサト氏本人(61歳、3世)に鑑賞した感想を聞くと「すごく感動した。子供向けにストーリーを変えているけど、原作のエッセンスはそのまま。僕の小説を読んだイタリア系子孫からも『同じ経験をした』との感想を聞いた。これもまた一つのブラジル人家族の物語。日本移民の勝ち負け抗争のデリケートな歴史は、知らない日系人も多い。すべての子供達に見てもらう価値があると思う」と高く評価した。

声優を務めた俳優の金子謙一氏は、「まるで自分の人生を見ているようだった。自分で声の出演をしているのに、今回はたくさん泣きました」と笑顔を浮かべた。

オンライン(https://123japones.com.br/)で日本語教師をする山西高史さん(31歳、3世)は、「日本移民の歴史をポップな感じで表現できているのが良かったと思います。小さな頃から家の中では靴を脱ぎなさいと言われるといった、日系人の家庭によくある逸話が上手に織り込まれていて、ブラジルにはない日本の文化が日常生活の中に自然に存在している様子がよく伝わってきます。また、今こそ日系ブラジル人としてのアイデンティティをしっかりと確立していますが、日本で生まれたため、小さな頃の私は自分が日本人だと思っていました。10歳のときに初めて身分証明書(RG)を受け取り、ブラジル人と書かれているのを見て涙を流したことを、今でもはっきりと覚えています」と映画の場面から想起される自分の過去を懐かしんだ。

開演前には監督のセリア・カツンダ氏、製作総指揮のキコ・ミストロリゴ氏やリカルド・ロッジーノ氏が登壇して挨拶した。6月には仏アヌシー国際アニメーション映画祭で世界初上映され、国際的にも注目を集めた。

上映後には「日系社会だけでなく、広く人々の心に響く普遍的な物語」との声も聞かれた。16日の後の反響が注目される。


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