双子の都カンジド・ゴダイ=理由は謎、メンゲレ関与説まで
リオ・グランデ・ド・スル州北西部のカンジド・ゴダイ市は、双子の出生率が全国平均の約5倍に達する「双子の都」として知られ、科学的関心が年々高まっている。遺伝的要因や地域特有の環境が影響しているとの仮説が唱えられている一方で、その要因は未だ解明されていない。隔年開催の「双子祭り」には100人を超える双子が集まり、地域固有の文化として受け継がれていると25日付G1など(1)(2)が報じた。
同市は、面積24万7047平方キロメートル、人口は約6100人の非常に小さな町でありながら、その高い双子出生率に注目が集まる。23日の「第13回双子祭り」は、市内外から多数の双子が集まり、会場には〝同じ顔が並ぶ〟独特の景観が広がった。
参加者の多くは地元出身者で、遠方から帰郷した双子も少なくなかった。テウトニア市に居住する双子の姉妹イリアさんとリリアさんは、「どこへ行くにも一緒です」と語り、久しぶりの地元の空気を楽しんだ。
同市の双子出生率の高さは、学術研究の対象として長年注目されてきた。リオ・グランデ・ド・スル連邦大学(UFRGS)は20年以上にわたり市内の出生データを分析し、開拓期に形成された少数のドイツ系入植者の子孫が地域に集中した結果、希少なアレル(遺伝子の変異型)が高頻度で受け継がれた可能性を示している。
なかでも、リニャ・サンペドロ地区では、1990〜94年の間に双子出生率が10%に達し、当時の全国平均1・8%を大きく上回った。調査時点で同地区に居住していた349人のうち44人が双子であり、国内でも例を見ない高い割合となった。
家系調査や姓の分布を分析した研究では、同一コミュニティ内での婚姻が長期間にわたり継続した歴史的経緯から、生殖的隔離が形成され、TP53遺伝子のP72アレルをはじめとする双子出生に関連する遺伝的素因が集積したと指摘されている。
一方、同市の状況をめぐっては、科学的根拠に乏しい俗説も広がってきた。地元の井戸水が原因とする説や、ナチス・ドイツの医師ヨーゼフ・メンゲレが同地を訪れたとする論も挙げられるが、裏付けはない。メンゲレは第2次世界大戦中、アウシュビッツ強制収容所で双子を対象とした非人道的な医学実験を行った人物として知られ、戦後は欧州の司法当局に追われ、ブラジルで逃亡生活を送った。
UFRGSのジョゼ・イグナシオ・ルンケス教授は「メンゲレがこの地域に来訪した形跡はない。当時ここにドイツ系移民が多いと知り得る環境も存在しなかった。多くの憶測が語られたが、真相は遺伝的要因にある」と強調。
祭り当日は、恒例となっている記念撮影や、町のシンボルである記念碑「豊穣の女神」への訪問などが行われた。参加者の中でも特に注目を集めたのは、カンピナ・ダス・ミッソンイス市から訪れた三つ子の男児で、母親のタシアラ・アルノルドさんは、「私の家系では4世代前にも男児ばかりの三つ子がいました。今回、自然妊娠で三つ子を授かり、家族の歴史が繰り返されたように感じます」と述べた。









