ウラン鉱山閉鎖30年後に解体へ=放射性廃棄物の処理法が未定
原子力産業の廃棄物は世界的課題だ。ブラジル初のウラン鉱山は閉鎖から30年を経て、ようやく解体準備が進むが、大きな課題を抱えている。サンパウロ州サントアマロで50〜80年代に稼働した、ブラジル原子力産業(INB)の事業所「ヌクレモン(Nuclemon)」で生じた放射性廃棄物「トルタⅡ」1万1334トンは、90年代にミナス・ジェライス州カルダスに搬入されたが、処理方法が決まっていない。この廃棄物の行方は、住民の長年の不安とも直結していると23日付G1(1)が報じた。
鉱山は1995年に閉鎖、国内ウラン鉱山としては初の事例となった。カルダスのINB施設では、1980年代に1500トンのウラン濃縮物を生産し、アングラI原発に供給、ブラジルの原子力開発計画を支えた。今年1月、国立再生可能天然資源・環境院(Ibama)はINBに鉱山解体の初の環境許可を出した。ブラジルではウラン採掘は連邦政府独占事業で、INBが唯一の採掘・加工許可企業だ。鉱山は寿命終了後、解体・無効化・撤去を通じて環境回復が義務付けられる。今国内で稼働中のウラン鉱山はバイーア州カエチテのみだ。
解体作業を進めるにはトルタⅡの処理方針を決める必要がある。国家原子力安全委員会(ANSN)の技術者アレシャンドレ・オリヴェイラ氏によると、トルタⅡは約50%のトリウムと1%前後のウランを含む濃縮物で、政府が希望すれば再利用も可能。INBは販売や許可施設への送付など複数の選択肢を検討中だ。
カルダス市民にとってトルタⅡの保管は長年不安の種だった。鉱山は18平方キロの敷地にあり、都市中心部から12キロ、川や環境保護区域(APA)に隣接する。地元の環境活動家は「我々は何十年も責任のない危険を抱え込まされ、別由来の廃棄物まで持ち込まれ、何の備えもなかった」と強い懸念を示した。
カルダス市は、INBが地域との合意を守っていると説明。ANSNによれば、トルタⅡは200リットルドラム缶1万9600本、同数の100リットル容器、四つの半地下コンクリートサイロに分け、放射線防護区域で保管されている。2021年にはさらに1179トンをカルダスに移送する計画もあったが、住民・政治的反発で実現しなかった。
ブラジルでは放射性廃棄物の最終処分場が未整備だ。ミナス連邦大学化学科のネルシ・デラ・サンチナ教授は「設置場所がなかったためカルダスに搬入された。原子力発電所の廃棄物も処理場所が必要で、82年以来研究が続いている」と指摘。
ドイツでは深層地質処分場の建設が検討され、2031年までに候補地を決定予定。フィンランドは世界初の恒久処分場を西海岸の花崗岩地盤400メートルに設置している。米国では9万トン以上の廃棄物が各地に分散し、87年にネバダ州ユッカマウンテンが恒久処分場に指定されたが、政治・法的対立で計画は停滞中だ。
連邦政府は、南部に放射性廃棄物集中保管と技術研究のための「Centena」設立を計画しており、環境許可申請と立地選定が進行中、開設は2028〜29年の見込みだ。しかし、トルタⅡが搬入されるかは未定で、ANSNのカルダス・ポソス担当コーディネーター、ダニエラ・レイ・シルヴァ氏は「トルタⅡにはトリウム、ウラン、希土類元素が含まれ、技術革新次第では廃棄物が戦略資源として再利用可能」と説明。
INBの公式見解では、カルダス保管のトルタⅡの最終処理方法は未定で、現地保管、許可施設移送、販売が選択肢にある。2024年6月には1万5千トンの販売入札が行われたが買い手がなく、今年12月まで延長された。
解体プロジェクトでは、トルタⅡ以外にも採掘で生じた1500万立方メートルの岩石処理が課題だ。酸性水の流出など環境リスクがあり、INBは継続的な水処理を行うが、一部はソベルボ川に流入している。さらに二つの大規模廃棄物ダムも管理下にあり、2024年には緊急レベル1から警戒レベルに変更されたが、安全性は確認されている。
解体・環境回復には20〜30年を要し、予算は約6億8800万レアル。閉鎖当時、環境規制や許認可制度が整備途上だったため、解体開始は大幅に遅れた。解体は構造物撤去、廃棄物処理に加え、汚染源と汚染地域の管理、環境回復、放射線・環境モニタリングを含む複雑な作業だ。チゲル氏は解体許可が下りたことは地域住民にとり、前向きな進展だと評価した。
最終的には鉱山跡地の用途決定がゴールで、制限付き利用から管理下での再活用まで幅広く、環境・原子力規制当局の承認が前提となる。









