SESC=アジア離散の芸術的営み=展覧会「記憶への手紙」
サンパウロ市のSESCパウリスタで14日から、展覧会「記憶への手紙(Cartas à Memória)」が開幕する。キュレーションを手がけたのは、日系ブラジル人研究者ユウジ・ラファエル氏。アメリカ大陸とアジア各地から29人のアーティストが参加し、写真、映像、絵画、彫刻、資料など約90点の作品を通して、20世紀から21世紀にかけてのアジア・ディアスポラ(離散)の芸術的営みと社会政治的背景をたどる。
本展の構想は、日系アメリカ人作家カレン・テイ・ヤマシタの著書『Letters to Memory』(2017年)に着想を得た。植民地主義や戦争、移住、そして記憶をめぐる複雑な歴史を再考し、「抑圧」「移動」「抵抗」といった体験を、芸術表現を通じて照らし出す。展示は、ブラジルやアメリカ合衆国、中米諸国に暮らしたアジア系移民たちの記録を軸に、北と南、東と西をまたぐ想像の地理を描き出す試みでもある。
キャロライン・リッカ・リー、ミミアン・スー、アリス・ユラ、リナ・キムら4人の女性作家による新作プロジェクトも発表され、アメリカ大陸におけるアジア系移民の軌跡とエスニック・エンクレーブ(民族的飛地)の記憶を掘り下げる。
ラファエル氏は、「近年のアートは、家族や記憶の物語を通して歴史の暴力と向き合い、冷戦という〝熱い地理〟が残した影をラテンアメリカとアジアの間に映し出す」と語る。過去・現在・未来の境界を溶かすように、複数の時空を往還する作品群が観る者に問いを投げかける。会期は来年5月3日まで。会場はセス・アヴェニーダ・パウリスタ5階のアートI。入場無料。









