マイゾウ・メーノス(まあーまあー)の世界ブラジル(42)=サンパウロ 梅津久
第34話―面白小父さん、小母さん
マナウスに“彗星”という日本食の定食だけを出すレストランがある。ご飯、味噌汁は食べ放題の定食で値段も割安なので結構人気がある。
このレストランをやっている小父さん、小母さんが一風変わっている。とにかくブラジル人が嫌いで、お客を説教することで知られている。
サンパウロのコンゴニアス空港の近くで同様の食堂をやっていたが、数年前に息子(私が勤めていた会社の同僚)が住んでいるマナウスに移ってきて、息子と一緒に三階建ての家を建て、その二階でレストランを営んでいる。
今は料理好き(本職は技術者なのだが)の息子が店を引き継ぎ、純日本食のおかず、刺身、寿司などが食べ放題の人気なレストランとなっている。
工業団地からの仕事帰りの道筋にあり、日本の駐在員、出張者にとても重宝がられているが、閉店が早いのが難点ではある。
その息子にブラジル人の奇麗な恋人がいるのだが、小父さんと小母さんは彼女とまったく話をしないほどブラジル人が嫌いだ。
また、知らないブラジル人の客が来た時、入口のカメラ付きインターホンでブラジル人だとわかると返事をしないし、入口の鍵を開けないこともある。何とか入ってきたブラジル人には「あかぼう、(終わった)」とか言って追い出してしまう。ブラジル人だと言葉もかけず、「ぶすっ」とした態度で料理を出すだけ。「ブラジル人に日本食の美味しさがわかるか!!」という具合で、その光景を見ているとブラジル人が可哀そうになる。
お客さんにたいする説教では、時々お供として梅干しを出してくれる。それを食べないと「なんだ梅干し食べんのか、健康にわるいぞ!!」、納豆を出して食べないと「こんなに健康に良いものを、次はださん!!」、出されたおかずを残せば「なんだ全部食べんのか、栄養つかんぞ、健康にも悪い!!」とお客が叱られる始末。
だが、女性には優しい。私の家内は、野菜などの選び方や、料理の仕方などを教えてもらったし、漬物などをもらって帰ったこともあった。
小母さんが先に他界し、小父さんもしばらく息子を手伝っていたが、小母さんを追うように他界してしまった。








