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アモリン=米国ベネズエラ侵攻なら南米危機勃発=「ベトナム戦争に匹敵」と警告

2025年12月10日

万華鏡2
セルソ・アモリン大統領付外交問題特別顧問(Foto: Wilson Dias/Agência Brasil)

【既報関連】米国とベネズエラの緊張が高まる中、セルソ・アモリン大統領付外交問題特別顧問は、米国介入が南米全体に深刻な悪影響を与える可能性があると警告した。同氏は、米国の軍事行動が「ベトナム戦争のような紛争」を引き起こす恐れがあるとの見解を示し、地域の平和と安定を守るためには外交的解決が不可欠だと強調したと9日付BBCブラジルなど(1)(2)が報じた。

数週間前、ピート・ヘグセス米国防長官やダン・ケイン統合参謀本部議長をはじめとする米国の高官らが、トランプ大統領に対し、ベネズエラに対する地上攻撃を含む新しい計画を提出したと報じられ、中南米での軍事的緊張を一層高めた。

アモリン氏は、8日付の英紙ガーディアンの取材に対し、トランプ氏がベネズエラの空域閉鎖を命じた最近の決定を「戦争行為であり、完全に違法だ」と非難。この危機が今後数週間で激化する恐れがあると懸念を示した。米国がベネズエラに侵攻する事態になれば、南米はベトナム戦争に匹敵する規模の紛争に巻き込まれるだろうと述べた。

両国の対立が深刻化すれば、最終的に「世界規模で関与を呼び込むことになり、非常に悲劇的な結果を招く」と強調し、南米が世界的な代理戦争の舞台になることを「最も望まない」と述べた。

同氏は、マドゥロ氏に辞任を求めるのは、ブラジルの立場ではないと改めて強調、力による政権交代には断固反対する立場を示した。「ブラジルはマドゥロ氏に辞任を迫ることは決してない。他国が干渉すべきではない」と述べ、マドゥロ氏が政権放棄するか否かは、彼自身の判断に委ねるべきであると明言した。ブラジルはベネズエラに圧力をかける立場になく、あくまでも平和的解決を支持していると強調した。

だが、トランプ米政権はマドゥロ氏に対して辞任を求める圧力を強化しており、特に外交的手段を超えて軍事的圧力を増大させている。報道によると、トランプ氏は、即刻出国すれば家族と共に避難できると最後通告を行ったが、マドゥロ氏は拒否した。

アモリン氏は、ブラジルがマドゥロ氏の亡命先になる可能性について「亡命に関してはブラジルが積極的に提案することはない」とし、「我々が米国の意向を支持しているように見えることは避けたい」と述べた。

だが、アモリン氏は亡命制度がラ米地域において伝統的にあることを認め、「右派・左派を問わず受け入れられてきた」と付け加えた。2005年にエクアドルのルシオ・グティエレス元大統領がブラジルに亡命を求めた際、「我々は彼を迎えに飛行機を送った」と振り返った。

一方でアモリン氏は、トランプ氏がマドゥロ氏に対して外交的解決策を選択し、平和的な権力移行を実現することを期待していると述べた。このような政治的変化には時間がかかるとし、ブラジルの軍事独裁政権(1964〜85年)の「遅く、徐々に、安全な開放」を例に挙げた。

加えて、ベネズエラにおける民主主義の回復に向けて、2004年に行われた国民投票のような方法を取り入れることを提案。当時のウゴ・チャベス大統領が国民投票案を受け入れた事例を挙げ、「現在、誰が勝つかは分からない」と述べ、ベネズエラの政治状況が不透明であることを認めた。

米国はベネズエラからの薬物密輸の流れを止めるために致命的な力を行使せざるを得ないと主張しており、従来の手段では麻薬流入を防げていないと説明。だが、国連は、米国の軍事行動が「司法手続きを経ない処刑」として人権を侵害していると懸念を表明している。

国連の2025年世界薬物報告書によれば、米国でのオーバードーズの主な原因であるフェンタニルはメキシコから流入しており、ベネズエラは同薬物の生産や密輸にはほとんど関与していないと指摘されている。米国で消費されるコカインのほとんどはコロンビア、ボリビア、ペルーから来ており、ベネズエラ供給はごくわずかであるとされている。

ロイター/イプソスの最新調査によると、麻薬密輸の容疑者を軍事力で殺害することを支持する米国人は、わずか29%にとどまっており、トランプ政権の政策には批判的な声も上がっている。共和党内でも賛否が分かれており、27%が反対、58%が支持している。一方、民主党の支持者の約75%は反対し、10%が賛成している。


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