日本伝統俳句協会=ブラジルのハイク・ハイカイ議論=東京で国際俳句シンポジウム開催
【東京発】公益財団法人日本伝統俳句協会による講演会「国際俳句シンポジウム+限界突破する虚子 熱帯のハイカイ(俳諧)―ブラジル日系移民俳句に観る虚子流国際俳句の構想」が7日、東京都江東区にある芭蕉記念館で開催された。
この講演会は、高濱虚子の門下を中心として展開していったブラジル日系社会での俳句を事例として、日本の風土を越えたブラジルでの季語・季題の開発・伝播の事情を考察し、その現代的な意味について展望を得ることを目的としている。会場には虚子の子孫の国際俳句協会星野高士会長をはじめ協会関係者・俳句研究者など50人以上が参加し、ブラジル俳句に造詣の深い5人のパネリストの話に熱心に耳を傾けた。
まず主催者である日本伝統俳句協会の会長井上泰至氏が登壇し、「虚子版国際俳句の消長」というテーマで、俳句とハイカイの違い、虚子自身が将来的に俳句が海外に進出していくためには国際歳時記が編まれる時がくると予言していたこと、ブラジルでの俳句普及に貢献した虚子門下の佐藤念腹についての説明があった。
続いて登壇した白石佳和氏(松陰大学教授)は、「ブラジル移民が見出したブラジル季題-花鳥風月から自然諷詠へ」というテーマで、戦前に虚子はシンガポールに滞在したことから熱帯季題論を提唱し、地域別に歳時記作成を重視していた時期があったこと、コロニア俳句の父とされブラジルでの季語を探求した佐藤念腹、1980年代になってブラジルでのハイカイ普及に貢献した増田恆河の二人の活躍に触れ、ブラジルで俳句からハイカイへと展開が進んでも、そこにはホトトギスの理念が根付いている様子が丁寧に解説された。
続く星野愛氏(渋谷区議会議員・星野立子氏曽孫)からは、虚子の孫にあたる星野立子氏が1953年にブラジルを「俳句行脚」として訪問した折り、各地で句会を催し現地の日本人から大歓迎を受けた様子が残された写真とともに語られた。
4人目の登壇者である久冨木原玲氏(前愛知県立大学学長)は「アマゾンで出会ったハイカイ・俳句」というテーマで、ブラジル人が詠むポルトガル語のハイカイは非常に哲学的である一方、現地の日本人が詠む俳句には熱帯特有の自然や労働・生活感が溢れているという考察が山口敏子句集の代表句を引用して解説された。
最後の登壇者であるスエナガ・エウニセ氏(愛知県立大学准教授)は、「『アマゾン季寄せ』とアマゾンにおけるポルトガル語」というテーマで、1919年に初めてブラジルで紹介された日本の俳句がホトトギスの理念を受け継ぎながらブラジルでは文学として成長し、今では学校教科書にも紹介されている現況について説明がなされた。
講演の最後にはパネリスト全員によるデスカッションが行われ、今後の国際俳句の方向性について熱い意見が交わされた。俳句の創造性と文化的融合性とともに展開するブラジルでのハイクとハイカイの可能性が語られ、4時間にわたった講演は参加者からの温かい拍手によって締めくくられた。








