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第60回パラナ民族芸能祭舞台裏(上)=日本演目の立役者、花柳龍千多さん

2022年7月30日

本番前の舞台稽古を行う「日系踊り会」のメンバー
本番前の舞台稽古を行う「日系踊り会」のメンバー

 今年、第60回を迎えたパラナ民族芸能祭。19日夜にクリチバ日伯文化援護協会(クリチバ文援協、吉田ロベルト・イサム会長)が行った日本チームの公演は、ほぼ満杯となる観客が来場するなど盛況を博した。特に今年は、約30年にわたってクリチバで日本舞踊を指導してきた花柳龍千多(りゅうちた)さんに改めて感謝の気持ちが伝えられた。出演者やスタッフたちに同祭に懸ける思いなど舞台裏の話を聞いた。(松本浩治記者)

 同祭では毎年(ここ2年はコロナ禍で本格開催は中止)、日本をはじめ、スペイン、イタリア、ウクライナ、ポーランド、ギリシャ、オランダ、ドイツの欧州勢とボリビア、そしてブラジルという10カ国のコミュニティ約15チームが出場して上位入賞が競われてきた。入場者数の多さと時間の正確さが上位入賞の基準となり、2時間という決められた時間(5分前後の誤差は許可)で公演を終えなかった場合は減点となる。
 日本の公演は毎回、上位入賞を果たしているが、これまでの最高位は2008年の移民100周年時の2位。毎年優勝候補のスペインは、スペイン政府が同祭を後押しし、在伯スペイン総領事が自ら出演するなど、熱の入れようが違うという。
 日本の公演が上位入賞を果たしてきた背景には、1990年代初頭からクリチバ文援協の「日系踊り会」「民舞愛好会」に日本舞踊を指導してきた花柳龍千多さんの存在が大きい。毎月、サンパウロ市から400KM離れたクリチバ市にで通い、約30年間、指導を継続してきた思いは、門下生たちの心にも深く伝わっている。
 日系踊り会の中心メンバーである久保マリさん(2世)、石田雅子さん(秋田県出身)、林ドラさん(3世)は、龍千多さんがクリチバに通いだした初期から踊りを続けるベテランだ。さらに、約20年、同会で踊っている菊地洋子さん(宮城県出身)と、若手4人を加えた9人が今回の舞台に立った。
 龍千多さんがクリチバに通いだしたのは、90年代当初のクリチバ文援協会長だった故・山田建昇(けんしょう)さんがサンパウロ市の文協(現・ブラジル日本文化福祉協会)を訪問した際、「日本舞踊の先生を紹介してほしい」と陳情したことがきっかけだったという。当時、女剣劇家(おんなけんげき)家の丹下セツ子さんとともにサンパウロ市をはじめ、各地で日本舞踊を中心とした公演活動を行っていた龍千多さんに白羽の矢が立てられ、クリチバでの指導が始まった。
 龍千多さんは2020年3月からの新型コロナウイルス感染拡大により、この約2年間は慣れないオンラインでの指導を続け、今年4月から対面での指導を再開。約30年間、一度も休むことなく稽古を続けてきた。
 クリチバ文援協元会長の原ルイ清さんの実姉で、パラナ連邦大学で歴史の教授(博士)をした後、「原パレスホテル」の経営にも関わった経験を持つ門下生の久保さんは、「こんな真面目な先生は他にいません。私たちのことを思って、いつもクリチバに来てくださる先生からは、いつも若い気持ちを頂いております」と感謝する。
 また、菊地さんも「本当に良い先生に巡り会いました。コロナでもオンラインで指導していただくなど、本当に嬉しかったです」と笑顔を見せていた。
 日系踊り会ではこれまで、地元クリチバをはじめとするパラナ州内、サンパウロ市やサンタカタリーナ州を訪問しているほか、海外ではペルーでの公演に出演した経験もある。
 「今回のパラナ民族芸能祭は、3年ぶりの対面での開催。久しぶりに大きな舞台で踊れることを楽しみにしています」と日系踊り会のメンバーたちは、公演を前に意気込みを表していた。(つづく)


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