《ブラジル》牧草地の52%が劣化=回復投資で新たな期待広がる

ジェツリオ・ヴァルガス財団(FGV)バイオ経済センターが14日、ブラジルには国土の18・94%にあたる約1億6千万ヘクタールの牧草地があるが、その52%は劣化状態にあるとの調査結果を発表したと14、18日付現地紙、サイトが報じた。
バイオ経済観測(オブセルヴァトリオ)と題する調査によると、劣化した牧草地が多いのは法定アマゾンやセラードだ。ブラジルは世界でも有数の牛肉の生産国で、国産牛肉の95%は牧草地で飼育されている。
牧草地の状態は牛肉の生産量や質に影響するだけでなく、地球温暖化ガスの発生を抑え、新たな森林伐採を防ぐ効果もある。劣化、疲弊した牧草地は生産性低下を招き、森林伐採が増えるという悪循環の原因ともなる。
FGVによると、既に劣化が見られる牧草地8900万ヘクタールの回復は、3838億レアルの投資が必要だが、この投資によって回復した牧草地は生産性が向上するため、回復のために投じた投資額以上の収益をもたらし、決して損にはならないという。
また、劣化した牧草地を回復させて生産活動を続ける事は、ESG(環境社会ガバナンス)の観点からも肯定的な結果をもたらすという。ESGは農牧業に限らず、あらゆる分野で企業が長期的に成長するために不可欠とされ、世界的に注目されている。
現政権になってからは特に、森林伐採や森林火災、金などの不法採掘が増加し、欧州などがブラジル産の牛肉や木材、金などの輸入や販売を規制しているため、ESGに配慮した生産活動は外国人投資家の関心を呼び、規制を取り入れた国での市場開放も期待できる。
FGVによると、1500万ヘクタールの牧草地の回復には211・7億レアルの投資が必要だが、その見返りは367・7億レアルに上る。また、低カーボン農業計画(ABC)に基づいた牧草地3千万ヘクタールの回復には425・1億レアルが必要だが、見返りは755・5億レアルとなるという。
FGVによれば、北部の劣化牧草地の89%が集中しているパラー、ロンドニア、トカンチンスの3州の牧草地が回復されれば、法定アマゾンの森林伐採拡大も抑制されるはずだという。