昔と今では大違いのタクラ氏の報道

ロドリゴ・タクラ・ドゥラン氏に関する報道が盛んに行われている。これは数年前なら考えられないことだ。タクラ氏は、ラヴァ・ジャット(LJ)作戦の担当判事だったセルジオ・モロ氏と同捜査主任のデルタン・ダラグノル氏を賄賂強要などの容疑で訴えている人物。LJ当時、モロ氏らを批判する内容の報道はほとんど見られなかったものだ。
タクラ氏は、LJ作戦最重要捜査対象のひとつ、オデブレヒト社の弁護士だった。資金洗浄に関与した容疑で逮捕命令が出され、2016年にスペインに逃亡。以来、現地からモロ判事らの違法性を主張し続けている。
タクラ氏の訴えの中には、LJ主犯として100年以上の実刑判決を受けたにもかかわらず報奨付証言で捜査協力をしたとして数年で刑務所から出たアルベルト・ユセフ氏とモロ氏の関係性に関する疑惑が含まれている。モロ氏とユセフ氏はバネスタード作戦でも担当判事とブローカー犯の関係だった。
LJ当時、タクラ氏の訴えは主要メディアではほとんど触れられず、一部の左派メディアだけが取り上げていた。
2019年6月、モロ氏らの携帯電話盗聴記録から、LJ捜査態勢の問題点を暴露した「ヴァザ・ジャット報道」をサイト「インターセプト」が行った際も、主要メディアは報じなかった。鑑定の結果、盗聴内容がモロ氏らのものだと確認されてからヴェージャ誌やフォーリャ紙が報道を開始した。
当時から「モロ氏は特定のメディアに守られている」と擁護派メディアの存在を実名付きで指摘されていた。2021年4月に最高裁が「モロ氏のルーラ氏に対する裁判には偏りがあった」との判断を出すに至っては、擁護派メディアも批判報道をせざるを得なくなっていた。
そして今年3月、タクラ氏はモロ氏とつながりのある弁護士から「逮捕回避のため賄賂を強要された」と連邦警察に供述した。
普通なら主要メディアがこぞって飛びつくネタだが、正直なところ、どこまで報じられるか怪しい所だった。ところがその日の夜のネット上最大の話題が、タクラ氏に関する報道となっていて本当に驚いた。
モロ氏とデルタン氏は現在、タクラ氏を「信用ならない犯罪者」と主張し、訴えが進行することを阻止しようとしている。だが逆に「モロ氏は法相時代にタクラ氏の裁判に干渉しようとした痕跡がある」との連邦検察庁の報告記録の報道も行われている。
この件、今後、いったいどうなるか。(陽)