最高裁=左派から不満や懸念の声=ザニン判事保守寄り判断=元ルーラ弁護士なのに?

ルーラ大統領の指名で最高裁判事に就任したクリスチアーノ・ザニン判事が就任以来、保守傾向の強い判断を繰り返していることで、左派の人々を中心に不満や懸念の声が広がっている。それに伴い、9月に定年が迫っているローザ・ウェベル最高裁長官の後任人事への注目度も高まっている。26日付グローボ紙(1)などが報じている。
ザニン判事の投票内容が気にされ始めたのは21日に行われた判事投票にさかのぼる。同日付エスタード紙(2)によると、同氏はこの日、「LGBTに対する差別発言は人種差別同様に処罰対象になる」か否かを問う投票で、「処罰対象に含まない」に投票した。同様の投票を行ったのは、ボルソナロ前大統領の指名で判事になったカシオ・マルケス、アンドレ・メンドンサ判事のみで、LGBT差別は処罰の対象となった。
ザニン判事への批判と懸念は、「個人使用のための大麻所持は処罰対象から外す」ことに関する判事投票で一気に高まった。25日付エスタード紙(3)によると、大麻の使用には医療用のものも含まれる上、個人の大麻使用は違法ではない。また、個人使用のための少量の大麻所持で逮捕された人や判決待ちの人で刑務所が溢れている中、最高裁判事の間では、個人使用のための少量の大麻所持は懲罰対象から外すことが前提で、量が問題視されている。25日現在も、11人中5人が「処罰対象としない」に投票している。
だが、ザニン判事だけが、「現行憲法では使用そのものは違法ではない」が「使用者と麻薬取引者との区別が曖昧になる」との理由で「処罰対象とする」に投票した。同日はメンドンサ判事が票の見直しを求めたことで投票が中断、延期されたため、退任間近のウェベル長官が投票を前倒しする事態も起きた。
26日付カルタ・カピタル(4)が報じているように、ザニン判事は25日夜も、南マット・グロッソ州で起きたグアラニー族、カイオワ族に対する暴力行為に関するブラジル先住民連絡会(Apib)からの訴訟を受け付けるか否かのヴァーチャル審理でも、この訴えを以前棄却した報告官のジウマール・メンデス判事の「受け付けない」とする判断に賛同。結果は4対7で「受け付ける」ことになった。
ザニン判事の一連の判断に対しては、ネット上を中心に左派やLGBT、先住民たちから落胆の声が広がっている。それは、ザニン氏がかつてルーラ大統領の個人弁護士を務め、ラヴァ・ジャット作戦の裁判で実刑に問われたルーラ氏の弁護を担当したことなどが広く知られており、左派や社会的少数派に有利な判断を行うと予想されていたからだ。
ザニン氏は就任前の上院憲政委員会での口頭試問でルーラ氏との関係を問われた際、「自身の判断に党派は関係ない」と発言しており、現状の判断はそれを証明しているとも言える。だが、ブラジルのみならず、米国をはじめ国際的に、最高裁判事は自身を指名した政治家の党派に忠実だと理解されている。
このため、ザニン判事の判断に失望している人たちは9月に75歳で定年退官するウェベル長官の後任判事に左派色の強い指名を行うよう、ルーラ大統領への呼びかけを強めている。とりわけ、女性判事は現在も2人と少なく、ジャンジャ夫人がフェミニスト団体と強い繋がりがあるため、女性判事の座の堅守と黒人女性の指名が求められている。
だが、27日付グローボ紙(5)は、側近によると、ルーラ氏は性別や人種に関係なく後任を選びたいとの意向を示しているという。