最高裁=土地争議で先住民優先判決=議会や農業界の反発必至か

最高裁が21日、先住民保護区の制定は現行憲法公布日の1988年10月5日に所有していた土地または当時法的係争中の土地に対してのみ認められると規定するマルコ・テンポラル(タイムライン)に基づく判決は違憲との判断を下したと同日付G1サイトなど(1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)(8)(9)が報じた。
20日付最高裁公式サイト(10)によると、今回の裁判は、サンタカタリーナ州ササフラス生態保護区内にある先住民保護区の返還を求めた環境研究所(IMA)の要請を第4地域裁が承認したことを受け、先住民族保護財団(Funai)が起こした控訴審だ。第4地域裁は現行憲法公布日に先住民族が伝統的に土地を占有していたことが示されていないとし、返還を命じていた。
タイムラインは法的な学説で、先住民族の土地に関する権利はブラジル国家創設前から存在し、国家は単にその境界を宣言し、確定するべきであるという学説と対立している。
だが、タイムラインの学説は、先住民族が居住しているまたは居住していた地域で農牧業を営む人達や開発を望む人達から強い支持を受けており、下院はこの学説に基づく法案を承認。上院憲政委員会は最高裁の審理を待って、同法案審議に向けた判断を下すことを決めていた。
同件の審理は2021年8月以降、ビデオ審理を含めて11回にわたり、最高裁史上、最も長い審理の一つとなった。
タイムラインの学説が否定されることは判事投票が5対2となった20日の時点でほぼ確定しており、21日は9対2でFunaiの訴えが認められた。
1988年5月をタイムラインとすることに賛成したのはヌネス・マルケス、アンドレ・メンドンサの2判事のみで、残る9判事は皆、現行憲法は先住民族が伝統的に占有してきた土地は憲法公布日に制限されず、永続的に居住できる文化遺産の一部であることを保証しているとの学説に賛同した。
タイムラインに関する訴訟は少なくとも226件あり、21日付アジェンシア・ブラジル(11)や21日付最高裁公式サイト(3)によると、最高裁での審理の行方を見守っていた先住民その他の民や国際的な人権団体は、21日の最初の投票者のルイス・フクス判事が6票目の反対票を投じた時点で歓声を上げ、歌と踊りで勝利を祝った。
これにより前政権で止まっていた先住民保護区制定が加速する見込みで、Funaiは国にとっても良い結果としているが、21日付BBCサイト(11)は、「偉大な勝利だが、土地をめぐる争いや脅威は続く」との先住民の声も掲載している。
他方、迫害された先住民が立ち退いた後の土地も含めた先住民居住地に住み、生産活動を行っていた農家などへの補償問題は未解決で、一括か、個別かも含めた審理は続く。
もう一つの課題は連邦議会で、既に法案を承認した下院を含む議会の対応も注目されている。21日付下院サイト(12)や上院サイト(13)では、最高裁と議会の間の緊張の高まりを示す表現も出ている。