大サンパウロ市圏=復旧大遅延で非難集中=電力会社が作業員削減?=5日後も20万世帯停電

【既報関連】3日に超大型の温帯低気圧による突風で起きた大サンパウロ市圏での大規模停電は、5日後の7日でも20万世帯が停電したままなど、異例の復旧遅延で市民が混乱。強い不満の声が上がっている。電源供給を担当する企業Enelに対しては、サンパウロ州検察局やサンパウロ市議会、連邦政府も問題とし、リカルド・ヌーネス・サンパウロ市市長(民主運動・MDB)が告発の可能性を示しながら批判する事態となっている。6日付G1サイトなど(1)が報じている。
3日に発生した停電の影響は長引き、4日現在も大サンパウロ市圏で250万世帯が停電していた。その内の210万世帯がEnelの管轄だったが、4日の時点でEnelが「停電の規模が把握できていない」「完全復旧は7日になる」という声明を出したことで、市民の間で不安の声が上がっていた。
停電は土、日の週末も続き、6日の月曜日になっても依然として50万世帯が電気のない生活を続けることとなった。停電被害が続いた家庭や商店では電気が使えないだけでなく、ネットや水道も止まったりしたため、日常生活だけでなく仕事にも影響が出た。また、6日はサンパウロ市内だけでも12校が休校となった。
大サンパウロ市圏でここまで長い停電は前例がないことから、サンパウロ州検察局では「緊急事態への対応策を無視していた可能性がある」として、検察官がEnelの捜査に赴く意向を表明。
また、サンパウロ市議会でもEnelに対する議会調査委員会(CPI)を立ち上げようとする動きが起きている。市議たちはCPIを通じ、1998年の民営化で、それまでの電力供給を担当していた公社のエレトロパウロから運営権のコンセッション(委譲)を受けた際のEnelがどういう状況だったのかなども調べる意向だ。
CNNブラジル(2)によると、リカルド・ヌーネス・サンパウロ市市長とタルシジオ・デ・フレイタス・サンパウロ州知事(共和者・RP)は6日、共同で記者会見を開き、こうした不測の事態に対する計画を立てる意向だと話している。
ヌーネス市長はEnelに関し、「連邦政府と劣悪な契約をしているのだろう。気候変動の問題にも対処した契約を今一度結びなおさなければならないだろう。こんなにも長期間、問題に対処できないなどということはありえない」と、厳しい口調で批判している。
UOLサイト(3)によると、Enelは2019年以降、従業員が36%減っており、人員不足が広範囲の停電に対応できなかった原因ではないかと見る向きも少なくない。
一方、タルシジオ知事は今回の停電について、「最大の敵は木だ」との発言を行っている。今回の停電で特に回復が遅れたのは街路樹の多い地域で、茂った枝や倒れた幹が電線にもたれかかって電柱を倒したり、大きな太い枝や幹が電線を切るなどの光景が見られている。
ヌーネス市長は電線の地下設置を進める必要を再度強調しており、費用の一部が消費者の負担となる可能性も浮上し始めた。
他方、フォーリャ紙(4)によると、来年のサンパウロ市市長選の有力候補の一人のギリェルメ・ボウロス下議(社会主義自由党・PSOL)は大停電での混乱に関し、Enelを民営化の失敗の例とし、市の対応も批判。市長選を前倒した対戦としても注目されている。
カルタ・カピタル(5)によると、Enelの管轄下では7日朝現在も20万世帯で停電が続き、復旧作業に追われている。