リチウム生産=1年以内に世界第4位へ=採掘拡大で環境リスクも

南米でのリチウム生産が拡大し、ブラジルが1年以内に世界第4位の生産国になる可能性がある。南米は世界のリチウム埋蔵量の約6割を有しており、化石燃料に依存しない電気自動車が奨励される中での需要の高まりで、戦略的な分野となっている。ただ、抽出法によってもたらされる環境リスクがあり、対策への議論も活発化している。16日付エスタード紙(1)が報じている。
リチウム埋蔵量が豊富な「リチウム・トライアングル」を形成するアルゼンチン、ボリビア、チリでは、リチウムは砂漠地帯の塩原から抽出した塩水から得る。だが、ブラジルでは渓谷などの岩石から産出する方法をとっている。
ブラジルは主にチリとアルゼンチンのリチウムに依存してきたが、ミナス・ジェライス州などにある豊富な鉱床が国内生産を加速させた。鉱山動力省によれば、ブラジルは現在、世界第5位にあたる2万2千トンのリチウムを生産しているが、1年以内に第4位になる見通しだという。軽量で電気化学ポテンシャルが高いリチウムは、ハイブリッド車や電気自動車のバッテリーに適しており、世界銀行は2050年までの需要はほぼ1千%増加すると見ている。
ブラジル最大のリチウムプロジェクトはカナダに本社を置くシグマ・リチウム社によるもので、30億レアル(約920億円)を投資。ミナス州ジェキチニョニャ渓谷での商業採掘は4月から始まった。
他方、同州でのリチウム採掘に従事してきた別の2社も、自動車バッテリー市場で競合するための拡大計画を進めているし、外国籍の多国籍企業3社も参入し始めた。資源分野最大手のリオ・チント社とヴァーレ社も同地域で新プロジェクトを検討中だ。
リチウムには将来的な利益が期待されるが、同時に環境上の重大な懸念が存在する。専門家が強調するのは「水の安全性に対する壊滅的な影響のリスク」で、チリのアタカマ塩湖のように、地下水を大量に汲み上げ、蒸発プールで濃縮して採取する方法は極度のストレスを与え、土壌の劣化や枯渇化などの脅威を与えると指摘する。水の蒸発が不要な直接抽出技術など、新技術を開発し、環境への影響を軽減する必要があるとしている。
アルゼンチンでは、19日に行われる大統領選の決選投票の結果がリチウム分野にも影響を及ぼしそうだ。リチウムは同国経済の成長要因の一つで、自由主義者のミレイ氏は国際通貨基金(IMF)への債務履行にリチウムを利用する可能性があり、現経済相のマッサ氏は技術生産者としてのリチウム活用を見込んでいると報じられている。