RS州大水害=ミツバチ巣箱が大量被害=農業界全体に損失拡大か

【既報関連】4月末からの豪雨で甚大な被害を受けたリオ・グランデ・ド・ノルテ(RS)州では、被害の実態解明が追い付かないところがある上、新たな雨による先行き不透明感や不安の高まりも出ている。
新たな実態報告が出たのは養蜂業界で、21日付アジェンシア・ブラジル(1)によると、RS州農業・メリポニ栽培連盟がミツバチ観測所やブラジル農業研究公社(Embrapa)、農務省との協力で行った調査で、西洋ミツバチと針なし蜂だけで少なくとも1万6900の巣箱の完全損失が20日までに確認されたという。各巣箱には平均5~8万匹のミツバチがいる。
巣箱の完全損失は最低66市で起きており、被害が特に大きかったパルマレス・ド・スル市では2千箱以上を損失した。完全損失は水没か水に流されることで起きた。水没は、より高い所から流れ落ちた水による浸水や地域の浸水で巣箱全体が水没し、蜂が全滅した場合だ。
ブラジルミツバチ研究協会によると、RS州には計48・6万個の巣箱があるから、被害は比較的小さく見えるが、先の数字には、部分的に水の影響を受けた巣箱やミツバチの餌不足で危険にさらされている巣箱は含まれていない。大洪水で洗われた土地は沈泥や土に覆われ、ミツバチの餌となる花がなくなっている。また、現在のデータはミツバチ2種だけを扱っており、野生の蜂も含めた全体をとらえていない。
他方、専門家は、ミツバチ減少による受粉効果減少も懸念している。ブラジル生物多様性・生態系サービス・プラットフォームとブラジル植物花粉媒介者相互作用ネットワークの報告書によると、ブラジルで人間が消費する植物の76%はミツバチによって受粉されている。ミツバチによる受粉は作物の生産性を向上させ、より優れた外観と品質の果物や種子を生み、製品の市場価値を高める。ブラジルの食料生産における受粉の経済的価値は430億レと推定されている。
ミツバチの受粉効果の高いリンゴの場合、ミツバチがいない、または少数の時は実が小さく、実の付き方も不規則になるというが、RS州はリンゴの国内生産の45%を担っており、55社の中小生産者の主な収入源だ。同州ではミツバチへの依存度が高くない大豆も12~20%生産されているが、ミツバチの貢献度減は大豆生産にも影響を及ぼす。気候変動や水害にミツバチ減少が加われば、農家の損害はより大きくなる。
21日付アジェンシア・ブラジル(2)は、週末からの雨で再び浸水などが起きた地域では、市民の間に不安や先行き不透明感が増しているとあるが、先行き不透明感は農業や食料生産でも同様と言えそうだ。