サンパウロ市市長選=現職副候補選びで混乱=前大統領の無理押しで=連立与党や議会が反発

サンパウロ市市長選で再選を目指すリカルド・ヌーネス市長(民主運動・MDB)の副候補にジャイール・ボルソナロ前大統領(自由党・PL)が強く推すリカルド・デ・メロ・アラウージョ氏(PL)が就くことが決定的となった。だが、メロ氏に対しては連立政党内部、サンパウロ市議会から強い反対の声が上がっており、ヌーネス氏自身も本意ではないとみられている。20日付フォーリャ紙(1)などが報じている。
メロ・アラウージョ氏がヌーネス氏の副候補になることは、20日に各報道機関が、ヌーネス氏の選挙キャンペーンを支援するタルシジオ・デ・フレイタス・サンパウロ州知事(共和者・RP)が「21日にメロ・アラウージョ氏を副候補と発表する」と報じたことで、決定的なものとして捉えられた(2)。
メロ・アラウージョ氏は軍警の特別機動隊(ROTA)元リーダーで、サンパウロ州食料保管センター公社(Ceagesp)の会長を務めていた人物だ。同氏を副候補にと最初に勧めたのはPLのヴァルデマール・コスタ党首だが、その名が浮上してもすぐに決まらなかったのは、ヌーネス氏自身が「自分の副候補として過激すぎる」と懸念していたためだと言われている。
サンパウロ市ではボルソナロ氏に対する拒絶率が2020年の市長選の時から高く、2022年の大統領選でもサンパウロ州内でこそボルソナロ氏がルーラ氏を上回ったが、サンパウロ市内ではルーラ氏が勝っていた。そうしたこともあり、ヌーネス市長は副候補にはもう少し穏やかな人物を求めていた。
アラウージョ氏はROTAのリーダーだった2021年に、当時大統領だったボルソナロ氏と共にマシンガンを持って写真に納まったことがある。そうしたイメージは、特に、犯罪多発地域のサンパウロ市周縁部では人気がない。それは、周縁部は黒人や褐色の居住者が多く、警察が自分たちに対する偏見を抱いているとの見方が強いためだ。
そのため、サンパウロ市議会の連立政党の議員たちはヌーネス市長に対し、メロ・アラウージョ氏を副候補とすることを考え直すように進言していた。彼らによると、2020年サンパウロ市市長選でのブルーノ・コーヴァス氏、22年サンパウロ州知事選でのロドリゴ・ガルシア氏(共に民主共和党・PSDB)などは、周縁部では保守候補というだけでキャンペーンすら思うようにできなかったことを伝えている(3)。
そうした背景もあり、ヌーネス氏の副候補選出ははかどらずにいたが、事態が急転したのは自己啓発家のパブロ・マルサル氏(労働刷新党・PRTB)がサンパウロ市長選への出馬を決めたことだった。ボルソナロ氏の支持者としてネット上で有名なインフルエンサーの同氏がヌーネス氏の票を奪うことを恐れたボルソナロ氏は、それまで以上にメロ・アラウージョ氏を副候補とすることにこだわるようになったという。
連立政党はボルソナロ氏の動きに難色を示しており、最大勢力の一つであるウニオンは重鎮のミルトン・レイテ・サンパウロ市議長を中心に、直前まで同党で副候補を出そうと粘ったが、結局、「市議会でのウニオンの発言権の増大」を条件に、メロ・アラウージョ氏を副候補とすることを認めたという。