トランプ銃撃事件=左右陣営が独自の見方=ブラジル政界に広がる反響=狂言説を唱える左派も

13日に米国ペンシルヴァニア州で起きたトランプ氏襲撃事件に関し、ブラジル政界も反応。ルーラ大統領(労働者党・PT)やトランプ氏と懇意だったボルソナロ前大統領(自由党・PL)も、それぞれに声明を出した。ブラジルでは、2018年の大統領選キャンペーン中に起きたボルソナロ氏の刺傷事件と比較する声が目立っている。
13日、ペンシルヴァニアで演説中のトランプ氏が銃声と共に右耳に手を当ててしゃがみ込み、警護担当者らに取り囲まれる姿や、その後も銃声が鳴り響くという衝撃映像は世界中を震撼とさせた。
事件後、ルーラ大統領はすぐに声明を発表。「トランプ前大統領に対する襲撃は、民主主義と政治的対話を護るすべての人々から激しく咎められなければならない。今日、我々が目にした光景は受け入れてはならぬものだ」と、襲撃を強く批判した。(1)
ボルソナロ氏もX(旧ツイッター)を通じて声明を発表。「世界最大の政治リーダーに我々の思いを捧げたい。一刻も早い回復を」と綴った。同氏は昨年起きた1月8日三権中枢施設襲撃事件の捜査で2月にパスポートを没収されているが、声明の最後に「就任式で会いましょう」と記し、注目を集めた。(2)
伯国では、今回の事件を、2018年9月にミナス・ジェライス州ジュイス・デ・フォラで起こったボルソナロ氏の襲撃事件と比較する声が目立ち、ネット上では保守派、左派が共に、双方の見解からこの事件に対する反応を示した。
保守派からは、事件発生当初、「また保守派の政治家が狙われた」と強い不快感を示す反応が多く見られた。その後、犯人のトーマス・マシュー・クルック容疑者(20)が白人でトランプ氏が所属する共和党の党員であることが判明したが、警察が「同容疑者による単独犯行」との結論を示すと、「アデーリオ(・ビスポ容疑者。ボルソナロ氏の刺傷犯)の時と同じだ」と、警察の捜査を不審視する声が目立った。
一方、左派の間では、刺傷事件時のボルソナロ氏の写真から血が見えなかったことや、ボルソナロ氏が大統領時代にはこの事件の捜査が大きく進展しなかったことなどから、「狂言説」を疑うグループがおり、今回の事件後も、容疑者や他の犠牲者が2人出た状態にも関わらず、「少なくとも今回は血は流れている」など、仕掛けを疑う声も少なくなかった。
ルーラ大統領の熱心な支持者の一人、アンドレ・ジャノーネス下議(アヴァンテ)は根拠もなく、今回の事件を狂言とする説を主張し、物議を醸している。(3)
今回の襲撃事件後は、世界中の政治リーダーがトランプ氏への連帯を示した他、トランプ氏が事件直後に拳を上げて暴力に屈しない姿勢を見せたことへの好感から、市場が好反応を見せるなど、大統領選の勝利への機運も高まっている。(4)
ブラジルでも各メディアの間でトランプ氏有利の見方は強まっている。ただし、G1サイトが5人の政治評論家に尋ねたところ、「これでトランプ氏は暴力に反対する姿勢を強く打ち出す必要が生じた」と、銃規制緩和支持者のトランプ氏の今後の方向性に注目する声や、「この事件を契機に、米国内での二極化傾向がまとまる方向に向かうのでは」との楽観的な意見も出ている。(5)