ルーラ=気候変動庁創設改めて約束=「林野火災は国を破壊する」

【既報関連】記録的な干ばつと高温により、森林火災が多発し、健康被害なども深刻さを増す中、ルーラ大統領が10日にアマゾナス州を訪問。選挙公約でもあった気候変動庁の創設や、国道319号線の完成などを約束した(10日付G1サイトなど(1)(2)(3)(4)(5)参照)。

アマゾナス州訪問は、同州が干ばつと森林火災で全州に緊急事態を宣言後も、ネグロ川の水位が9日間で2メートル低下するなどの窮状の中で行われた。
大統領は環境相、保健相、先住民族相らと共に、連邦政府として緊急事態を認めた21市の一つのタフェ市を上空視察し、アルヴァランエス市やマナキリ市なども訪ねた後、マナウス市で市長らと会談。マナウス市でのイベントでは気候変動庁(Autoridade Climática)開設も約束した。
大統領によると、気候変動庁開設は気候変動に伴う極度の気候リスクと闘うための国家計画に基づく公共政策を拡大、加速させるための条件の確立のためだという。現在のブラジルは平年を上回る高温と過去44年間で最悪の干ばつに見舞われ、全国各地で火災が拡大。生物多様性が脅かされ、国土の6割以上が煙で覆われている上、都市インフラさえ危険にさらされている。
新たな政府機関は様々な領域間の連携を促進し、気候変動に対する適応・緩和のための戦略立案や調整、その実施という任務を負う。同庁創設は大統領選時の公約だったが、誰が指揮を執るかなどで統一見解が出せず、発足が遅れている。
大統領はまた、全国各地で発生している林野火災についても言及。「火災発生はパンタナルやカアチンガ、大西洋岸森林帯、アマゾンの熱帯雨林だけだと思っていたが、サンパウロ州でも1日に45市で火災が起きるなど、人為的な火災が多発している」と語った上、「火災を起こす輩は国を破壊しようとしている」とし、不要な火の使用に懲罰を科すことを擁護した。
また、現地を視察している最中は、アマゾナス州やロンドニア州を他の地域とつなぐ幹線道である国道319号線の完成を優先する意向も表明。319号線は1968年に建設が始まったが、中ほどの約400キロの工事が環境問題で中断され、部分的にしか機能していない。今年7月も、同線周辺の森林の不法伐採増加を理由に工事が差し止められている。
大統領は、アマゾン川とソリモンエス川の浚渫工事に5億レを投じることも約束した。
10日付アジェンシア・ブラジル(6)によると、同日は、森林火災に歯止めがかからないことにしびれを切らしたフラヴィオ・ジノ最高裁判事が、「ブラジルは森林火災のパンデミック状態だ」として、アマゾンとパンタナルの火災対策措置を決定した。これにより、連邦政府は両地域での消火活動に携わる国家治安部隊に参加する消防士を増やす必要が生じた。ジノ判事は新しい消防士は火災の被害を受けなかった州の出身者とすることも定めており、連邦道路警察も高速道の監視強化が義務付けられた。
他方、ルーラ氏は11日、新規入隊する陸軍兵7万人/年を訓練し、防災任務に就かせる可能性を示唆。この考えは陸軍司令官にも伝えてあるという(11日付G1サイト(7)参照)。