『北斗七星さようなら南十字星今晩は』=小林音吉さんコラム集刊行

サンパウロ州サンジョセ・ドス・カンポス市在住の技術移住者の小林音吉さんが6月に、コラム集『北斗七星さようなら南十字星今晩は』を日毎叢書企画出版から刊行した。これは同出版が出す『楽書クラブ』に掲載されたコラム31編をまとめた作品集だ。独特のユーモアセンスたっぷりの文章で、思わず笑いがこぼれるような逸話がいっぱい。
小林さんは1941年3月に東京都葛飾区柴又町生まれ。26歳の時、1967年にJALで米ロサンゼルスまで飛んでから、アルゼンチナ丸でサントス港まで渡った変わり種だ。
来伯数年後、職探しにサンベルナルド・ド・カンポの工場地帯を新聞求人広告を頼りに面接に歩き回っていた頃、《その日の求職活動も不発に終わり、ある工場の正門前を通りかかったら、人の良さそうな守衛さんが私を呼び止め、守衛所の中に招き入れてくれた。彼は温めていたアルミの弁当箱を取り出し蓋を開け、そこに三分の一ほど取り分け私に食べろと言ってきたのです。痩せて買い色の悪い日本人の若者がぼんやり歩いているのを見て、気の毒に思ったのかもしれません》との心温まる経験を最初にした。
デカセギ就労していた頃の経験談も。《もう十数年前になりますが、日本で働いていた頃のことです。暑さの厳しい夏でした。アパートの隣人が孤独死したのです。ぱったりと生活音がしなくなって2日後から、隣の部屋の換気扇から異臭が漂い始めたのです。直ぐに大家さんに連絡し、警察に電話するように伝えました。出勤前の慌ただしい時間に、7~8人程の警察の関係者が狭いアパートの2階通路に上がって来ました。それから参考人・第一通報者として数人の警察や刑事らしき人達から、同じような質問をされました。出勤時間が間近になってきたので大家さんが気を利かせ、担当の警官に事情を伝えやっと解放されました。あの時の異臭は数カ月の間、鼻の奥から消えずに残り無くなりませんでした》との珍しい逸話も書かれている。
バールを経営していた頃、《5キロほど離れた牧場で働くおじさんが、4キロほどのタツー(アルマジロ)を買ってくれないかと持ってきたのです。その肉は豚肉より油が少なく深みのある味でした。ただ、メスの腹には十数匹の仔がいたのにはびっくりしたと同時に可愛そうなことをしたと心が痛みました。その頃、カスカベル(ガラガラヘビ)もから揚げにして頂きましたが、大変美味でした。生きている時の姿を見なければ、癖になりそうな味でした》などと特異な食経験も。
興味のある人は同企画出版(電話11・3341・2113)まで連絡を。