臓器移植でHIVに感染=不正疑われる研究所摘発

ガンなどの病気で臓器移植を待つ人が絶えない中、臓器移植を受けた患者6人が移植後にヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染(1人は死亡)したことが判明。リオ市警が14日朝、逮捕令状4件と家宅捜索令状11件を受けて遂行したヴェルム作戦で不正が疑われる研究所の共同経営者や技師を逮捕と同日付G1サイトなど(1)(2)(3)が報じた。 臓器移植が原因でHIVに感染した患者が確認されたリオ州はブラジル初の臓器移植が行われた州で、2006年以降、1万6千人以上の人の命を救ってきた。
だが、11日、HIV陰性とされた臓器提供者2人からの臓器移植を受けた患者6人がHIVに感染していたことが判明と報じられ、州保健局がその情報を確認。保健省や同州検察、市警、同州地方医師協議会、連警が調査に乗り出した(11日付G1サイトなど(4)(5)(6)参照)。
同日は、臓器提供者が健康か否かの検査はノヴァ・イグアス市の民間研究所PCSラボ・サレメが行い、HIV陰性という診断書を発行したが、移植後のHIV感染が判明したため、保存されていたサンプルを別の研究所で調べた結果、HIV感染を確認とも報じられ、PCSは即座に閉鎖された(11日付G1サイト(7)参照)。
PCSは23年にリオ州保健局(SES―RJ)が行った電子入札で落札。提供された臓器の血清学的検査を行う契約は、12月に1100万レで成立した。PCSはそれ以前から血液検査やトキソプラズマ症、肝炎、梅毒、ガンなどの病気特定を含む臨床&病理学的分析サービスを提供。22年~今年9月に州保健局が払った金額は2150万レで、臨床検査は月平均6万9千件超、ガンなどの病気の生検を含む病理学的分析を含むと7万3千件に達していたという(12日付G1サイトなど(8)(9)参照)。
PCSは11日、内部調査機関を創設と発表すると共に、州健康基金へのサービスは保健省と国家衛生監督庁(Anvisa)が推奨する診断キットを使っていたとも述べた。
だが、12日付G1サイトなど(10)(11)によると、その後、臓器提供者の1人はHIV陰性とした診断書の署名は同分野では働いていない生物医学医のもので、医師登録番号は1年前に登録を抹消された別の生物医学医のものであることが判明。検査キットが原因で起きたミスかの確認のためにキットの購入記録の提出を求めても、該当書類は提出されず、検査が行われていなかった可能性もある。市警は14日、PCSが増益を狙い、HIVの検査の手を緩めたと発表している(14日付G1サイト(2)参照)。
また、地域生物医学評議会によると、診断書に署名した医師もPCSも正式に登録されていないという。また、現在は活動していない医師の登録番号を他者が使用することは認められていないことも明言した(13日付G1サイト(12)参照)。PCSは薬剤師協議会にも登録されていない。
なお、14日に逮捕されたPCS共同経営者で技術主任、産婦人科医のワルテル・ヴィエイラ氏はもう一人の臓器提供者がHIV陰性との診断書を書いた医師で、同州元保健局長で現下議のドトール・ルイジーニョ氏(進歩党・PP)の叔父。別の共同経営者のマテウス・サレス・テイシェイラ・バンドリ・ヴィエイラ氏は同下議のいとこだ。ルイジーニョ氏は保健相候補にもなり、今も同州保健局などへの影響力を持つが、関与の有無は不明だ。
同日はPCS技師のイヴァニルソン・フェルナンデス・ドス・サントス氏も逮捕されたが、技師のクレベル・デ・オリヴェイラ・ドス・サントス氏、診断書に署名した生物学医で管理部門助手のジャケリネ・イリス・バセラル・デ・アシス氏は所在不明だ。
なお、13日付G1サイト(13)によると、同州検察は13日、今後は臓器移植関連の検査は州立血液学研究所(Hemorio)のみで行うことを進言。PCSの検査後に臓器移植を受けた他の患者の感染検査も行われている。