市長選決選投票=サンパウロ市はヌーネス氏再選=二極化ゆるみ、中道大躍進=タルシジオは大統領選に弾み

27日、全国51市で市長選の決選投票が行われた。サンパウロ市では現職のリカルド・ヌーネス氏(民主運動・MDB)がギリェルメ・ボウロス氏(社会主義自由党・PSOL)を大差で破って勝利した。全国的に見た結果はルーラ大統領(労働者党・PT)にもボルソナロ前大統領(自由党・PL)にも苦いものとなり、社会民主党(PSD)などの中道勢力の台頭が目立つ選挙となった。同日付G1サイト(1)などが報じている。
サンパウロ市ではヌーネス氏が59・35%対40・65%でボウロス氏に圧勝した。ヌーネス氏は市内の57地区中54地区でボウロス氏以上の票を獲得した。ヌーネス氏の勝利は、軍政時代からの老舗政党MDBにとって、選挙で選ばれた初のサンパウロ市市長を誕生させることにもなった。(2)
ボウロス氏が勝ったのは市中央部のベラ・ヴィスタと南西部2地区のみで、自身が住んでいるカンポ・リンポをはじめとした極南部でも後塵を拝した。ルーラ大統領は「貧しい地域が勝敗の決め手になる」と考え、周辺地区などに強いマルタ・スプリシー元市長を副候補につけたが、効果は発揮しなかった。
ルーラ氏は、南大河州ポルト・アレグレでの市長選でも、ジウマ政権元閣僚のマリア・ド・ロザリオ氏(PT)がセバスチアン・メロ氏(MDB)に38・47%対61・53%で大敗するなど、痛い敗戦が見られた。
ルーラ氏にとっての朗報は、大接戦が伝えられていたセアラー州州都フォルタレーザでエヴァンドロ・レイトン氏(PT)がボルソナロ派のアンドレ・フェルナンデス氏(PL)を50・38%対49・62%の僅差で振り切ったことだ。同市は地元の左派大物シロ・ゴメス氏の民主労働党(PDT)がレイトン氏の推薦を行わなかったため、苦戦していたが、同市では、2016年以降で初、決選投票では唯一のPTの州都市長が誕生した。(3)
ミナス・ジェライス州ベロ・オリゾンテでも、決選投票でルーラ氏が支持したフアジ・ノーマン氏(PSD)がボルソナロ派のブルーノ・エングレール氏(PL)を53・73%対46・27%で破り、再選した。ノーマン氏は最年長市長でもある。(4)
ボルソナロ氏のPLは人口20万人以上の市では最多となる16市(全103市中)の市長を生んだが、ボルソナロ氏が決選投票で支援した候補者は11人中3人しか当選しておらず、後味の悪さが残った。(5)
今回選挙で最も大勝したといえるのはPSDで、887人が市長に選ばれた。これは2020年の233人の4倍近い数字となっている。また、2位MDB853人、3位ウニオン583人と、中道政党が上位に名を連ねている。
その一方で、民主社会党(PSDB)は520人から273人にと市長数を半減させた。90年代から2014年まで続いたPT対PSDBという対立図式がPT対PLにと様変わりしたことは2018、2022年の大統領選で印象付けられていたが、今回選挙は2極化の裏で力をつけてきた中道勢力の台頭を示す形となっている。
今回選挙で特に強調されていることの一つは、サンパウロ市市長選でヌーネス氏を支持し、州政府にPSD党首のジルベルト・カサビ氏を擁するタルシジオ・デ・フレイタス・サンパウロ州知事(共和者・RP)が、より一層ボルソナロ氏から独立した存在となったことで、2026年の大統領選出馬に向け、また一歩前進したと見る向きも少なくない。(6)