ボベスパ急落、ドル最高値更新=財政懸念とFRBで市場動揺

サンパウロ市証券市場(B3)のボベスパ指数は18日、3・15%下落して12万771・88ポイント(P)で取引を終えた。この下落率は2022年11月10日以降最大で、取引中には6月以降の最低値である12万457・48Pを記録。この背景には、ブラジル国内の財政問題と米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げペースの鈍化を示唆したことがある。FRBは政策金利を0・25%引き下げ、金利レンジを4・25~4・50%としたが、引き下げに慎重な姿勢を示し、インフレ対策として高金利を維持する方針を示した。このタカ派的な姿勢がドルを強化し、ドルは対レアルで約3%上昇、史上最高値の6・27レを記録したと18日付インフォ・マネー(1)(2)(3)などが報じた。
CMSインヴェスチのアナリスト、アリソン・ゴンサルヴェス氏は、「12万3千Pを割ったことは弱気の兆候であり、次の目標は重要なサポートゾーン(価格が下落しても反発しやすい支持線となる価格帯)がある12万Pになる」と述べた。当日の出来高は830億レで、ボベスパ指数および指数先物契約のオプション満期日に当たっていた。
また、連邦下院では基礎的財政赤字が続く場合に人件費の伸びや税制優遇措置の増加を制限したりする法案が可決されたが、上院での採決が議会休会までに間に合うかが懸念されている。投資家は政府が提案した措置が骨抜きにされるリスクも警戒しており、ヴァロール紙が党派リーダーが継続的社会扶助給付金(BPC)の規則強化案を却下することで合意したと報じたことも影響した。同日午後は、ブラジル国債の入札で売却ゼロ、買い戻しが提案額の10%に止まり、市場の動揺がさらに加速した。
一方、XPのエコノミスト、アレシャンドレ・マルーフ氏は、25年の対ドル予測が6・20レの水準で推移すればインフレ率は最大5・90%に達すると予測。この為替圧力が新興国通貨に厳しい環境をもたらし、輸入コストや物価の上昇に大きな影響を与えると指摘する。
このところ、ドルは頻繁に記録を更新しており、特に6レを超えて以降、上昇傾向が顕著だ。ブラジルの輸入品価格はドルに依存しているため、ドル高の影響は直接的に消費者に波及している。ドル高は特に、食品や燃料などの生活必需品の価格に反映されやすく、急激な物価上昇を引き起こしている。たとえば、食料品では、輸入小麦を使用したパンや、輸出向けに価格が引き上げられる肉類が大きな影響を受けている。実際、直近12カ月間の肉類価格は15%上昇しており、米や豆類、牛乳、食用油、コーヒーといった基本的な生活必需品も10%以上の値上がりを記録。特に、金融商品に投資し、インフレから身を守る手段を持たない低所得層の家計を圧迫している。
また、ガソリン価格は12カ月間で8・75%上昇。輸入比率が高いディーゼル油のコストも急騰している。ディーゼル油は公共交通機関や物流に利用されるため、間接的なインフレ要因となっている。さらに、家賃は建築コストや生産者価格に基づく指標で調整されるため、ドル高による影響がより反映されやすくなっている。
中銀は、25年のドル相場を1ドル=5・85レ、26年を5・80レと予測。だが、FRBの政策やブラジル政府の財政姿勢次第ではさらなる上昇も予想され、政府が市場との対話を強化し、財政健全化への取り組みを明確に示すことが求められている。
他方、国際的な要因としては、25年の米大統領交代がドル相場に与える影響も無視できない。FIAビジネススクールの教授カルロス・オノラト氏は、「ドル高は期待の反映であり、将来の不確実性が大きいほどドルの需要が高まる」と指摘。ブラジル政府は財政健全化とインフレ抑制の取り組みを進める必要があるだけでなく、国際的なリスクへの対応も迫られている。