【7日の市況・速報】Ibovespaは前日比1.57%安の14万1,356.43ポイント/アルゼンチン、外貨準備ほぼ枯渇 残高7億ドルとの推計/為替・金融環境に不透明感 ドル高進行でレアルは5.35に/投資所得税率18%で統一へ/
ブラジル株、9月初旬水準に逆戻り 調整続き主力株が軒並み安
金融・鉄鋼株中心に売り、ペトロブラスは小幅高で支え
ブラジル株式市場の代表的指数であるイボベスパ(Ibovespa)は10月7日、続落となり、終値は前日比1.57%安の14万1,356.43ポイントと、9月4日以来の安値を付けた。
前日の小幅安に続く調整色が一段と強まり、出来高は回復したものの、相場全体に慎重ムードが広がった。週初からの下落率は1.97%、10月入り後は3.3%の下げとなっている。
この日のイボベスパは朝方、14万3,600ポイント台で寄り付いた後、午後にかけて下げ幅を拡大し、一時14万1,035ポイントまで下落した。主力の金融セクターと鉄鋼関連が売られ、特にCSN(-3.78%)やウジミナス(-3.49%)など鉄鋼大手が午後を通じて安値圏で推移した。
時価総額首位のヴァーレ(Vale)は1.41%安の58.75レアルで取引を終えた。原油が比較的落ち着いた動きを見せたことから、ペトロブラス(Petrobras)は堅調に推移し、普通株が0.12%高、優先株も0.36%高と小幅な上昇を維持した。
一方、主要銀行株はサンタンデール(-2.06%)を筆頭に軒並み安。全82銘柄のうち上昇はわずか8銘柄にとどまった。
値上がり率上位にはミネルヴァ(+1.21%)、ペトロレコンカーボ(+0.89%)、BBセグリダーデ(+0.79%)が並ぶ。逆に下落率首位は住宅開発大手MRV(-12.12%)。第3四半期のオペレーション速報でキャッシュフローが市場予想を下回ったことが嫌気された。
この影響は不動産関連株全体に波及し、ディレシオナル(-3.74%)、クリ(Cury)(-3.90%)、シレラ(-2.60%)なども売られた。
税制改革案が委員会通過 投資所得税率18%で統一へ
LCI・LCAなどの免税は維持、政府歳入見通しは下方修正
同日、注目されたのは連邦議会での暫定法案(MP)1303/2025の可決である。これは投資に対する所得税制度の見直しを含む包括的な税制改革案で、下院・上院の合同委員会で13対12の僅差で承認された。
報告者である労働者党(PT)のカルロス・ザラチーニ下院議員は、金融投資および自己資本利益(JCP)にかかる所得税率を18%で統一する修正を盛り込んだ。当初案の17.5%から若干の引き上げとなる。
一方で、農業金融を支えるLCI(住宅債)やLCA(農業債)、およびインセンティブ付き社債の免税措置は維持され、オンラインギャンブルへの増税は見送りされた。この修正により、政府の税収見込みは2兆1,800億レアルから1兆7,000億レアル(約4800億円)に減少した。
ザラチーニ氏は「農業・不動産分野の資金供給を維持するための調整だ。免税を外せば法案は否決された」と述べ、現実的な政治判断だったと説明した。背景には農業ロビーや金融業界からの強い要請があった。
また、違法オンライン賭博(bets)への対策として、外国口座にある未申告資産を自主的に申告すれば、15%の所得税+15%の罰金で合法化できる「リチーゴ・ゼロ(Litígio Zero Bets)」制度が新設された。政府はこの措置で50億レアル(約1400億円)の歳入増を見込む。
今回の税制改正案は、2026年以降に施行予定で、IOF(金融取引税)減収分を補うための財源確保策として、財務省が年初から準備を進めていたものだ。
為替・金融環境に不透明感 ドル高進行でレアルは5.35に
米金利政策・通商懸念が交錯、株安圧力強まる
為替市場ではドルが対レアルで上昇し、1ドル=5.3501レアル(前日比+0.74%)と約3週間ぶりの高値を付けた。
背景には、米国の金融政策への不透明感と、ブラジルと米国の間で続く通商関税問題がある。
バロー・インベストメントのエコノミスト、パロマ・ロペス氏は次のように指摘する。
「ルーラ大統領とトランプ前大統領が友好的な声明を出したものの、関税問題は依然として外交交渉に委ねられており、企業は不確実性の中にある。特にトランプ側の交渉責任者マルコ・ルビオ国務長官が強硬派である点も懸念材料だ」と述べた。
また、米ミネアポリス連銀のニール・カシュカリ総裁が「米経済はスタグフレーション(景気停滞と物価高騰)の兆しを見せている」と発言し、FRBによる利下げ観測を後退させたことも、ドル高を後押しした。
米株式市場ではS&P500が0.38%安、ナスダックが0.67%安と下落し、ブラジル市場の投資心理を冷やした。
アルゼンチン、外貨準備ほぼ枯渇 残高7億ドルとの推計
ミレイ政権、米国に支援要請 選挙前に緊迫感
隣国アルゼンチンでは、外貨不足が深刻化している。トレーダーの推計によると、財務省が保有するドル準備は約7億ドルにまで減少した。
ミレイ政権は為替防衛のため、6営業日連続でドルを売却し、計15億ドルを市場に投入したとみられる。
中央銀行は約100億ドルを保有しているが、IMF(国際通貨基金)との合意により、特定の為替水準を超えない限り介入できない。そのため、財務省のドル売却で辛うじてペソの安定を維持している。
並行市場のレートは1ドル=1,500ペソ超と公式レート(1,429ペソ)との差が広がり、1年先の為替先物では60%の下落予想が織り込まれている。
ミレイ大統領はこの危機の最中、著書『奇跡の構築(La Construcción del Milagro)』の出版記念イベントを開催。ブエノスアイレスのモビスター・アリーナを満員にし、自らロックを歌うという“政治ショー”を演出した。
選挙まで20日を切り、支持層への訴えを強めている。
住宅金融の新方針、預金準備率を引き下げへ
政府、2026年までに15兆円規模の資金供給見込む
ブラジルのジャデル・フィーリョ都市相は7日、政府が新しい住宅金融政策を今週金曜日(10日)に発表すると明らかにした。
銀行が保有する住宅向け預金の法定準備率を引き下げ、民間融資を促すことで、2026年までに1500億レアル(約15兆円)規模の資金を住宅市場に供給する計画だ。
現在、中央銀行は銀行に対して、預金の20%を強制的に凍結(コンプルソリオ)させているが、政府はこの比率を緩和し、解放分の8割を公的住宅融資(SFH)に、2割を民間住宅市場(SFI)に振り向ける構想を示した。
金利高と貯蓄流出による住宅ローン減少を逆転させる狙いである。
同相は「中間所得層の金利は現状19〜22%と高すぎ、実質的に住宅購入が不可能になっている」と述べ、金利低下を促す構造改革の必要性を訴えた。
政府はこの施策により建設業の雇用創出とGDP押し上げ効果を期待している。
日本の投資家への示唆
レアル資産は選別局面、政治・通貨両面のリスクを注視
ブラジル市場は9月以降、好調な上半期から一転して調整局面に入った。金融・素材セクターの下落とドル高進行が同時に進む局面では、外国人資金の流出リスクが高まりやすい。
一方で、税制改革の方向性が明確化したことで、長期的には投資環境の透明性が高まる可能性もある。
個人投資家にとっては、レアル建て債券やETFを通じた分散投資が依然として有効だが、為替変動のリスクを考慮し、ヘッジ手段を確保することが重要だ。
機関投資家の視点では、住宅金融や再生可能エネルギー関連など政府支援が見込まれる分野が中期的なテーマとなる。
アルゼンチンの通貨危機が南米全体の投資心理を冷やす可能性もあり、地域リスクを踏まえたポートフォリオ調整が求められる。