バノン「国務長官にブラジル制裁を要請」=トランプ就任式前にブラジルメディアに明言=ボルソナロ派政治家多く出席

20日、米国でドナルド・トランプ氏が大統領に就任した。ジャイール・ボルソナロ前大統領(PL、自由党)本人は出席不可だったが、その仲間の右派議員らは、トランプ氏からの圧力がボルソナロ氏の被選挙権を回復させることを期待して、大挙21人以上が就任式に出席した。それに応えるように元ホワイトハウス首席戦略官のスティーブ・バノン氏は「ブラジルへの制裁を国務長官に働きかける」と明言した。
20日付フォーリャ紙(1)の取材に対し、極右指導者バノン氏は19日、トランプ大統領の就任式にジャイール・ボルソナロ氏が欠席したことを理由に、次期国務長官マルコ・ルビオ氏にブラジルに対して行動(制裁)を起こすよう要請すると語ったと報じた。バノン氏はこの週末に世界中の右翼代表者向けイベントを企画し、特別ゲストとしてボルソナロ氏を招待していた。その代わりに三男エドゥアルド・ボルソナロ氏を含むブラジル議員が出席した。
ボルソナロ氏は最高裁から2024年2月以来没収されていたパスポート返還の許可が下りず、20日に行われたトランプ氏の大統領就任式には出席できなかった。就任式にはミシェレ夫人が代わりに出席した。
だが、ボルソナロ派の議員たちは大挙してトランプ氏の就任式に参加した。CNNブラジルが確認したところによると、その数は21人。ボルソナロ氏三男エドゥアルド下議を始め、ビア・キシス下議、ソステネス・カヴァルカンテ下議らボルソナロ氏の自由党(PL)の政治家が18人を数えたほか、マルセロ・ヴァン・ハッテン下議(ノーヴォ)など国内を代表する極右派政治家の姿が目立っている。
19日付コレイオ・ブラジリエンセ紙(2)によれは、上級選挙裁判所(TSE)の決定により8年間停止されているボルソナロ氏の被選挙権を返還するようブラジルの司法と連邦政府に、トランプ氏が圧力をかけるだろうとボルソナロ氏は信じている。
19日付BBCブラジル(3)から取材を受けたボルソナロ派の政治家らは「2020年のトランプ氏、22年のボルソナロ氏の大統領選での敗北以来、弱体化していたボルソナロ主義にとってトランプ氏の再登場は希望の光となった」「経済の影響力などで風向きは間違いなく変わる」との発言を行っている。
ジェツリオ・ヴァルガス財団(FGV)の国際政治学者のギリェルメ・カザロンエス氏もトランプ政権がブラジル最高裁のフェイクニュース対策などに対し「言論の自由への脅威」と称して強い圧力をかけてくることを予想している。その背後には政府効率化省長官に就任した大物実業家イーロン・マスク氏の存在がある。彼のSNSプラットフォーム「X」は、モラエス判事が命ずる虚報拡散に伴うアカウント削除に応じなかったため、昨年1カ月に及ぶブラジルでの運用停止処分を受けた。
トランプ氏の共和党は米国議会で、X側が巨額の罰金を受けたこの処分に強い反発を感じており、昨年のうちにブラジル最高裁に対しての制裁を求めるなどの法案を提案している。
だがカザロンエス氏は「トランプ氏がボルソナロ氏の被選挙権の回復までを実現させる可能性は低い」と見ている。米国議事堂襲撃事件でトランプ氏は罪に問われなかったが、ボルソナロ氏は別件2件で被選挙権の剥奪を命じられた上に、23年1月8日の三権中枢施設襲撃事件でも連邦警察から首謀者との判断を受けている段階だからだ。