米国の新移民政策=ブラジル人らも不満表明=大統領令には差止命令

【既報関連】米国のトランプ新大統領が就任式で強調した新移民政策は国内外で強い反発を招いており、州知事や移民達が裁判所に訴えるなどの抗議行動も起きている。米国政府は23日も、538人の不法移民を捕らえ、強制送還の準備中と発表したが、同日はトランプ氏が出したばかりの大統領令を差し止める司法判断も出ている。
トランプ氏は選挙中から、より厳しい移民政策をとり、正式な書類を持たない不法移民や違法な越境入国者を捕らえ、各々の国に送り返すと公約していた。
その言葉を裏付けるように行われたのが20日の就任演説であり、複数州で不法移民538人を逮捕という23日の発表だ。23日付G1サイト(1)によると、ホワイトハウスのキャロライン・レビット報道官は、逮捕されたのは「犯罪を犯した不法移民」だと説明している。
同氏はまた、トランプ氏の就任以来、既に数百人を空軍機で国外追放したとも発表。国外追放者の国籍や送還先、追放者が既に逮捕されていたのかなどの詳細は明らかにされていないが、ブラジルの連邦警察は24日、同日夜、ベロ・オリゾンテに国外追放者158人が到着すると語った。外務省によると、ブラジル人は88人で、残りはラ米諸国出身者と見られている。米国では不法移民に対する有罪判決は拘留のみを正当化するもので、国外追放を法的に正当化することはない。国外追放は罪の重さや出身国からの引き渡し要請、米国による亡命や難民申請拒否によって起こる。
なお、トランプ政権は国境警備局に国外追放を行う権限を与えており、米国に入ったばかりの人をメキシコに送還できる。これは国際法で禁じられているが、入国管理局職員の権限拡大で国外追放手続きが加速化した可能性がある。通常の国外追放手続きは移民の出身国との二国間協定などが必要で、時間がかかる。
23日付アジェンシア・ブラジルなど(2)(3)(4)(5)によると、新政権に対する訴訟は国外追放加速化の動きに反対したものだけではなく、米国で生まれた子供は全員、米国籍(市民権)を取得できるという憲法で保障された権利のはく奪に対する抗議や訴訟も起きている。トランプ氏が米国に不法または一時的に滞在している両親の下で生まれた子供の米国市民権を政府機関が認めないよう義務付け、親が不法移民の場合は子供もろとも国外追放する意向を表明しているからだ。
ブラジル人には、この権利を利用し、渡米後に子供を作ったり、出産前に米国に移住または旅行して子供に米国籍をとらせる人が少なくなく、新大統領が「出産ツーリズム」を禁じたとして不安を感じている人や、トランプ政権を訴える意向の人もいるようだ。
憲法で保障する権利はく奪に対する訴訟は米国内の知事からも起きており、23日にはシアトルの連邦裁判所判事が、不法移民や観光客の子供の市民権をはく奪する大統領令を一時的に差し止めた。大統領は即座に控訴する意向だという(23日付G1サイトなど(6)(7)参照)。