クラコランジアが空っぽに⁉=薬物常用者が市内分散

サンパウロ市当局や軍警などにより、サンパウロ市セントロの「クラコランジア」から薬物常用者が追い払われ、市内各地へと分散している。市当局は「取締りと社会支援強化による成果」と評価しているが、専門家や支援団体は問題の根本的解決ではなく、強制的措置や人権侵害の懸念も指摘していると13日付G1など(1)(2)が報じた。
リカルド・ヌーネス・サンパウロ市市長は、常用者が密集していたセントロから急激に減少したことに驚きを示した。
一方、グローボ局の取材によると、常用者の滞留地域が市内各地に拡散し、東部のヴィラ・カンパネラやタトゥアペ、中心部のコンソラソンやカンポス・エリゼオス、南部のカンポ・ベロ、北西部のピケリなど複数地域に分散していることが確認された。
今回の急激な移動の背景には、市と州が共同で実施したモイーニョ地区のファヴェーラ(貧民街)の一斉取締りがあるとみられる。同地を拠点としていた密売人レオナルド・モンテイロ容疑者の逮捕と取引網の解体により、薬物供給が減少し、使用者の移動が促されたと見られている。市当局からは常用者らの移動に関して、公式な説明はなされていない。
市は保健・福祉対応を強化し、薬物依存者への支援策に注力している。街頭での声かけや受け入れの件数は、今年1月の6742件から4月には1万1037件に増加。
常用者の数を減らすため、監視カメラシステムを増設し、犯罪捜査に寄与する情報の収集を行ったほか、密売人によって支配されていたホテルを閉鎖し、長期ケアサービスの導入や心理・社会的ケアセンターのCapsの拡充など複数の保健支援策を講じてきた。
こうした施策によって密売人の活動領域は縮小され、常用者の路上からの移送も加速。ドローン監視システムのデータによると、クラコランジアに滞留していた人数は、昨年5月時点の651人から、今年同月には103人に減少したという。
クラコランジアの分散は初めてではない。2012年や2022年にも警察や市の介入により、常用者が市内各所へと移動し、「ミニ・クラコランジア」と呼ばれる現象が発生していた。現時点では、薬物問題の表面化は抑えられたものの、その構造的課題はむしろ都市全体に広がりを見せている。