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ペソ高で対アルゼンチン輸出絶好調=経済復調、自動車部門牽引

2025年7月23日

ブラジルの対アルゼンチン輸出額の推移(単位:10億ドル)(21日付エスタード紙の記事の一部)

 25年上半期、ブラジルの対アルゼンチン輸出は自動車部門の好調により、前年同期比55・4%増の91億2千万ドルに達した。厳格な財政政策と為替調整を経て回復基調にあるアルゼンチン経済は、国際通貨基金(IMF)からの融資支援も受け、外貨準備高を400億ドルに拡大。こうした動きはブラジルの輸出増加に直結し、両国の経済協調の深化は、南米全体の動向を占う上でも重要な意味を持つと21日付エスタード紙(1)が報じた。

 23年末に発足したハビエル・ミレイ政権は、財政再建と通貨切り下げを断行し、一時的に深刻な景気後退を招いたが、経済は成長軌道へ回帰。25年第1四半期の国内総生産(GDP)は前年同期比5・8%増、前期比でも0・8%増と堅調な回復を示した。通貨ペソも実質的に上昇し、これがブラジル製品輸入を促進している。

 商工開発省(MDIC)によれば、25年上半期、アルゼンチンはブラジル輸出の5・5%を占め、28・7%の中国、12・1%の米国に次ぐ第3の輸出先となった。とりわけ、自動車部門が成長を牽引し、全国自動車工業会(Anfavea)の統計によれば、25年上半期のブラジル国内での自動車生産台数は122万7千台に達し、前年同期比で8万8782台の増加。

 輸出台数も同期間で16万5299台から26万4149台へと10万台近く増加。同協会のアンドレア・セラ税務・貿易担当理事は「輸出が今年の産業成績に極めて重要な貢献を果たしている」と述べた。

 25年上半期におけるアルゼンチン向けのブラジル製自動車輸出シェアは60%に達し、24年の34%から大幅に上昇。18年以来の最高水準となった。セラ氏は「アルゼンチンは歴史的にブラジル車の主要な輸出先であり、今年の顕著な伸びを踏まえると、25年も高いシェアを維持する見込みだ」と語る。

 ジェトゥリオ・ヴァルガス財団ブラジル経済研究所(Ibre/FGV)のリア・ヴァルス研究員は「ペソ高によってブラジル製自動車の価格競争力が高まり、輸出拡大を後押ししている」と分析。化学製品や食品も対アルゼンチン輸出の主力品目となっている。

 一方で、アルゼンチン経済は未だ外貨不足や高インフレといった構造的課題を抱えている。23年12月には、為替の公式・非公式レートの乖離を縮小すべくペソの大幅な切り下げを断行し、これが一時的な景気後退と貧困率の上昇を招いたものの、その後は外貨収支の安定に寄与した。

 経済学者ファビオ・ジアンビアジ氏は「24年初頭はペソが極端に割安で輸入が抑制され、輸出が増加し、経済活動は低調だった。今年はインフレ率の上昇が為替の実質価値を押し上げ、輸入が過去最高水準に達したことで、貿易黒字は大幅に縮小した」と分析。

 実質為替競争力は25年1月時点で約40%低下。加えて、景気回復が輸入需要を押し上げた。アルゼンチンの元工業生産相ダンテ・シカ氏は「政府は外貨不足対策として金融規制を緩和し、国民が保有する現金ドルの引き出しを促している」と説明した。

 この一環で、ミレイ政権は未申告資産への罰則免除を導入し、ドル資金の合法活用を後押し。25年4月にはIMFと総額200億米ドルの48カ月間融資枠で合意し、120億ドルが即時供与された。これに伴い、為替規制の一層の緩和が表明された。

 ヴァルス氏は、「現在の為替レートには問題があり、生活コストの上昇は広く認識されている」と指摘。一方、シカ氏は「変動相場制を学びつつある過渡期にあるため、短期的な混乱は避けがたいが、過去のような為替の急激な変動や外部ショックが再発する可能性は低い。現在のマクロ経済環境は格段に安定している」との見解を示した。


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