クーデター疑惑裁判=陸軍元司令官証言が波紋=連警調書と異なる内容で=モラエス判事「嘘」と叱責

2022年大統領選後のクーデター計画疑惑に関する公判が19日に最高裁第1小法廷で始まり、証人喚問が行われている。初日となった19日は元陸軍司令官のオスカル・フレイレ・ゴメス氏などが証言を行ったが、同元司令官が公判で行った証言の内容が連邦警察で行ったものと異なり、アレッシャンドレ・デ・モラエス判事が叱責する場面なども見られた。同日付フォーリャ紙(1)が報じている。
19日に始まった公判は、ボルソナロ前大統領ら、クーデター計画の中核を占める「核心1」と呼ばれる被告8人に関するもので、19日は、三軍元司令官や連邦道路警察元コーディネーター、電子投票器の信ぴょう性を疑わせる資料を作ったとされる企業の社主などが証人喚問を受けた。(2)
フレイレ・ゴメス氏は連警の捜査報告書や連邦検察庁の起訴状で、「ボルソナロ前大統領らが行おうとしていた大統領選の結果を変える条令発令という形でのクーデターを阻止した人物」と認識されており、80人を超える証人の中でも最も注目されていた人物の一人だった。この件のことで同氏が公に話すのもこれが初めてだった。だが、この日、同氏が行った証言はそれとはやや趣を異にするものだった。
フレイレ・ゴメス氏らは2022年12月7日にボルソナロ前大統領から条令の最初の草案(ミヌタ)を見せられたが、「(憲法の範囲内で法的側面に基づいて調査・検討中と聞き)驚くことはなかった」と語った。
同氏はこの件で同年中に何度か前大統領と会ったことを認めた上、その内の1回の会談で、民主主義崩壊の可能性に対する反対を表明したと述べた。同氏によると、ボルソナロ氏はその際、クーデターについて調査・検討しているとだけ述べたといい、それに対してカルロス・デ・アルメイダ・バチスタ・ジュニオル空軍司令官(当時)は「協力しない」と答え、フレイレ・ゴメス氏は「国際社会と国内の支援、議会、法の側面など、複数の側面を考慮する必要がある」と丁重に伝えたという。
また、有名になった、ボルソナロ前大統領に対する「あなたを逮捕しなくてはならなくなる」との発言は行っていないと述べた。この証言は、同席していたというバチスタ元空軍司令官の証言と矛盾する。同氏はこの件について、「違法な措置をとれば法的な罪を負わざるを得なくなると言った」のであり、「陸軍は憲法上の権限を越えるような行動はとらない」と答えている。
元陸軍司令官はさらに、クーデター計画で被告となっているアルミール・ガルニエル元海軍司令官に関し、クーデターに賛同する意思があったか否かはわからないとした。「ガルニエル氏は立場を表明した。彼もミヌタには驚いたと思う。私は彼が共謀したとは解釈していない」と述べた。
ここまで発言したところでモラエス判事は言葉を遮り、フレイレ・ゴメス氏が法廷で嘘をついたと非難した。「証人は知っていることを隠すことはできない。私は証人に真実を語る機会を与えている。もし連警に対して嘘をついていたのならば、あなたは警察に嘘をついたと言わなければならない」とし、「あなたは警察に嘘を語ったのか、それとも法廷で嘘をついているのか」と詰問した。
それに対し、フレイレ・ゴメス氏は「50年間、陸軍に在籍したが、嘘は決してつかない」と反論した。また、「ガルニエル氏が発した『大統領を支持する』という言葉が何を意味するかは推測できない。その時の彼の意図を私が解釈するべきではない」と答えた。
フレイレ・ゴメス氏の証言は連警や検察庁の推論を薄める内容であったため、ボルソナロ前大統領をはじめとする被告たちの弁護士が反論材料に使う可能性が出てきている。