熊本大学の山城教授=沖縄県人会に資料集寄贈=『青年隊だより』など計6冊

これまでにブラジルを何度も訪問している熊本大学教育学部の山城千秋教授が、ブラジル沖縄県人会(知花ルイ会長)に編集復刻版の「占領期奄美・沖縄の青年団資料集」6冊を寄贈した。その贈呈式が4月29日午後2時からサンパウロ市リベルダーデ区の沖縄県人会館で行われ、県人関係者など約30人が集まった。
寄贈されたのは、奄美大島連合青年団機関誌『新青年』(1950~53年)および『青年奄美』(53年)、沖縄青年連合会機関誌『沖縄青年』(49~53年)、沖縄県青年団協議会機関紙『沖縄青年』(57~60年)、沖縄産業開発青年協会機関紙『青年隊だより』(60~61年)の4巻のほか、付録『十周年記念 沖縄県青年団史』(61年、沖縄県青年団協議会)の復刻版と、山城教授らの解説などを掲載した別冊『解説・総目次・索引』の計6冊。
同資料集の復刻版を鹿児島大学の農中至(のうなか・いたる)准教授と編集・解説した山城教授は、第2次世界大戦後の45年から72年の本土復帰までの27年間にわたって米軍占領下にあった当時の青年たちが戦災復興をはじめ、祖国復帰運動等の中核を担ったと説明。その中でも特に、米軍基地建設と伊佐浜での強制的な土地接収等で労働環境を奪われた青年たちを海外に送り出した沖縄産業開発青年隊の機関紙『青年隊だより』について、「海外雄飛をめざす青年たちをどのように勇気づけ、占領期沖縄の青年対策・青年教育の内容を知る貴重な手がかり」と位置づけている。
この日の贈呈式には、知花会長をはじめとする沖縄県人会役員および会員、ブラジル沖縄県人移民研究塾の宮城あきら代表、2022年12月に解散した「在伯沖縄青年協会(元沖縄産業開発青年隊)」の元会員らも出席。山城教授から知花会長に6冊の資料集が手渡された。
知花会長はあいさつで、山城教授が長年にわたって沖縄の研究をしていることに感謝の気持ちを表し、「この6冊の資料を利用・勉強して、今後さらにコミュニティーの力を強めていきたい」と述べた。

引き続き、あいさつに立った山城教授が今回の資料集を8年かけて収集・編集してきた経緯を説明し、終戦後の米軍占領下の中で、「沖縄を支えたのは海外の沖縄の人々だということを忘れてはいけない」と強調した。また、山城教授の伯父も沖縄産業開発青年隊の一員としてブラジルに渡っていたことで、こうした研究に興味を持ったとし、同じ青年隊でブラジル沖縄県人会の重鎮である山城勇さん(96)に世話になってきたことにも言及。この日の贈呈式に出席した同青年隊の知念直義さん(84)と松本正雄さん(84)に対して「沖縄県では見たこともない資料もあるので、青年隊の方々にはぜひ見ていただきたい」と資料集の一読を勧めていた。
松本さんは「我々青年隊が人並みにブラジルで暮らしていくことができたのは、先輩移民の方々のお陰。自分たちを息子のようにして助けてくれた」と先人への思いを語っていた。

贈呈式の後は、山城教授、知念さん、松本さんの3人による『かじゃで風』三線の演奏も披露され、参加者による自由発言と質疑応答、懇談会も行われた。