上院=環境ライセンス法案承認=農業利する簡素化で波紋

上院が21日、環境ライセンス基本法案を承認。20年越しで討議されてきた法案は、下院に差し戻された後、大統領裁可に回される見込みと同日付G1サイトなど(1)(2)(3)(4)(5)が報じた。
環境ライセンスを与えるためのガイドラインと責任機関による適用の在り方を定めた法案(PL2159/2021)は、賛成54、反対13で承認された。
この法案は下院で17年間討議して承認した後、上院でも4年間かけて承認にこぎつけたもので、下院が作成したオリジナルの法案に修正が加えられたため、もう一度下院に差し戻され、再度承認されたら、大統領裁可に回される。
ただ、上院が承認した法案の報告者の一人が前政権の農相だったテレーザ・クリスチーナ氏(共和者・PP)であることや農牧業関係議員らが承認を後押ししたことからもわかるように、新法案は従来の法案に比べ、農牧業者や農業企業などを益する内容だ。
それは、環境リスクをもたらさない活動や、橋や水力発電所、ダムの建設、既存の高速道拡張のように、国家主権または公の災害によって実施が必要となった戦略的な活動、粗放的、反集約的、小規模集約的な畜産業、農業関連種栽培を行う農業企業は環境ライセンスの取得が免除または簡素化されるからだ。
また、汚染の危険性が低い、または中程度の小規模または中規模の活動や企業を対象とする遵守とコミットメントのライセンス(LAC)や環境特別ライセンス(LAE)も定められており、ライセンス発行機関が事前に設定した要件に従い、遵守すると自己宣言することでライセンスが発行される場合もあり得る。
クリスチーナ上議は同法案の目的は国内の事業へのライセンス発行をより明確かつ公正、効率的に行うことで、技術的厳格さへのコミットメントを再確認し、大規模プロジェクトの環境影響調査、公聴会、三段階評価を義務付けていると強調。現在は2万7千件以上の環境規則があり、規則が重複しているため、重要な事業や取り組みを妨げ、責任ある投資を阻害しているとも述べた上、環境犯罪への罰則も強化と正当化している。
だが、専門家は、同法案が維持されれば、アマゾン河口の石油探査や法定アマゾン内を縦走する国道舗装など、環境面の影響が心配されるプロジェクトも容易にライセンスが取得できるようになることへの懸念を表明。
環境省は、この法案は社会環境管理に悪影響を及ぼし、訴訟増加につながる可能性があり、環境ライセンスの取得プロセスを遅らせ、社会と連邦政府のコスト増につながり得ると評価。企業家の自己申告に基づく簡易化されたライセンス方式やLACなどは環境面の安全を脅かすとの声明も出した。
レイラ・バロス上議(民主労働党・PDT)も、環境保護は国際的な課題で、「ブラジルは環境面で国際的な信頼性回復の過程にあり、この好意的な印象が外交面でも経済面でもブラジルにとっての真のチャンスへと変わりつつある」と警告した。
環境団体も、農業活動への免許制度除外などを批判し、修正法案は1988年憲法以来の環境法制における最大の後退と主張。未制定の先住民居住地や逃亡奴隷や解放奴隷の子孫が住むキロンボを保護地域から外す項目なども批判の的で、11月開催の国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)前の印象悪化も懸念される。
ただ、同法案は上院議長とクリスチーナ上議、官房長官の合議後に本会議にかけられたこともあり、前日の委員会では事業規模や環境面への影響を定義する権限を州や市に移譲したことを批判したジャッケス・ワギネル上議らの労働者党(PT)議員も、修正動議提出や見直し請求などを避けた。(6)(7)
環境団体などが批判している項目には大統領が拒否権を行使する見込みだが、最終的には拒否権の拒否が起き、上院が承認した骨子を保ったまま、法令発効となる可能性がある。