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米金融大手がブラジル株に熱視線=割安感やルーラ後の政局見据え

2025年5月29日

ウォール街では新興国市場を巡る熱狂的な機運が高まりを見せている(Foto: Lo Lo/unsplash)
ウォール街では新興国市場を巡る熱狂的な機運が高まりを見せている(Foto: Lo Lo/unsplash)

 米主要金融機関が新興国市場への投資判断を相次いで引き上げる中、ブラジルが有望な投資先として改めて脚光を浴びている。JPモルガン、バンク・オブ・アメリカ、モルガン・スタンレーなどは、ドル安や米金利の低下期待、中国経済の持ち直しといったマクロ経済要因に加え、2026年のブラジル大統領選を見据えた政治リスクの後退、割安な株価水準を評価材料に挙げる。特に、市場では「ルーラ不在」の選挙シナリオが優勢となっており、新政権誕生による財政政策の転換が期待されている。こうした見方を背景に、外国人投資家による資金流入も再び加速しており、ブラジル市場への強気姿勢が一段と鮮明になりつつあると27日付エスタード紙(1)が報じた。
 このところ、複数の米銀が新興国資産に対する投資推奨を強めている。JPモルガンは新興国市場を「オーバーウェイト(買い推奨)」とし、投資妙味の高い地域として注目。その背景には、ドル安、米中関税摩擦の緩和、米国での金利低下期待がある。同社はレポートの中で、「新興国の中では中国、インド、ブラジルが特に魅力的」と指摘した。
 バンク・オブ・アメリカも、「現状では新興国株が最も有望」と強調し、同地域の株式が他の資産クラスを凌駕すると見ている。一方、モルガン・スタンレーは、新興国全体では一部資産の売却を推奨しつつも、中南米、とりわけブラジル株を選好。かつて、財政懸念から売却を勧めていた同社は、足元ではブラジル株をオーバーウェイトに再格上げし、26年中頃までにイボベスパ指数が約30%上昇し、18万9千ポイントに達するとの見通しを示している。
 実際、外国人投資家は23年末以降の停滞期後、今年4月17日以降だけで200億レアル超をブラジル市場に投入。投資流入の勢いが明確に回復している。
 モルガン・スタンレーは、ブラジルへの投資を後押しする要因として、25年第4四半期に見込まれる利下げの開始、さらに26年大統領選を挙げ、これを「重要な転換点」と評価。同社は、現政権の支持率が歴代平均と比べて低水準にあることを踏まえ、政権交代による財政運営の見直しに期待を示している。
 中南米全体でも選挙の季節が到来しており、地域資産の見直し機運が高まる可能性がある。25年にはアルゼンチンとチリが議会・総選挙を、26年にはペルー、コロンビア、ブラジルが大統領選を控える。英キャピタル・エコノミクスは、「共通するテーマは現政権への広範な不満」とし、選挙が政策転換の契機となる可能性を指摘している。
 一方で、ウォール街に広がる楽観ムードを共有しない声もある。米ウェルズ・ファーゴは、新興国株の足元の好調を受け、同市場へのエクスポージャー縮小を顧客に勧めている。同行は米国を含む先進国の資産を選好しており、その背景には政治・経済の不安定性、ガバナンスの脆弱性、規制リスクなどがあるとする。
 英オックスフォード・エコノミクスも、新興国株に対して「依然として相対的に慎重な立場」を崩していない。確かにドル安は同地域の追い風となるが、同社は「米ドルは25年にすでに底を打った」としており、これ以上の恩恵には限界があるとの見方を示している。


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