米国務長官=外国公務員にビザ制限=検閲に加担した人物に=モラエス判事に影響は?

米国のトランプ政権は28日、米国民に対する検閲的行為を行う外国の公職者に対し、米国への入国ビザ発給を制限すると発表した。その対象にはブラジル最高裁のアレッシャンドレ・デ・モラエス判事も含まれると見られている。これは予てからボルソナロ前大統領三男のエドゥアルド下議が働きかけていたトランプ大統領による同判事への制裁の一つだが、その効果を疑問視する声も上がっている。
米国のマルコ・ルビオ国務長官は28日、米国民に対して検閲的行為を行う外国当局に対して、ビザ発行を制限すると発表した。同長官はその際に「南米」との言葉を口にしたが、それが直接、誰のことを指すのかは明言しなかった。
ルビオ長官はこの日、表現の自由の権利を行使した米国民に罰金、嫌がらせ、訴追を行った当局に対して、「新たな方針」を適用するとSNSに投稿した。また、「米国企業の持つSNSのプラットフォームでの発言を理由に逮捕状を出したり、逮捕状を出すと脅したりすることは容認できない」とモラエス判事を批判し、「制裁も視野に入れている」ことを明らかにした。(1)
ルビオ長官の発表後には、トランプ大統領元側近のジェイソン・ミラー氏が同長官の発言をリポストし、「これを読んで思い浮かんだ人とシェアを」と書き込んだ後、「僕から始めよう、『やあ@アレッシャンドレ!』」と続け、賛同者らを煽る行為を行った。(2)
米国政府が発表した措置は米国内での移民国籍法に基づいたものだと考えられている。同法では、特定の人物の入国が米国の外交に危険をもたらすと判断された場合、国務長官がその人物の入国を拒否することができるとしている。
先週の時点では、モラエス判事に対してはグローバル・マグニッキー法が適用されるのではないかと予想されていた。同法は人権侵害や汚職を行った個人に対し、国籍を超えた制裁を可能にする法令で、具体的な処罰としては、対象となる人物が米国政府管轄下に持つ資産の凍結などの経済制裁を課すとしている。
この発表の数時間後、マウロ・ヴィエイラ外相は下院の外交委員会で同件に関する質問を受けた。それに対して同外相は、「米国が外国当局にビザを発給することを義務付ける抜け穴がある」とし、米国が多国間による会議を行う場合に公式ビザを発給することを義務付ける「ホスト協定」があることを明らかにした。(3)
ルビオ国務長官が発表した制裁は、ボルソナロ前大統領三男のエドゥアルド氏が、下議職を休職してまで米国に長期滞在し、同国の企業や議会に働きかけていたものだ。
だが、28日付グローボ紙によると、ボルソナロ派の議員たちは、モラエス判事に対する制裁措置は「実質的な効果がほとんどない」と見ているという。取材を受けた議員らは、制裁措置はボルソナロ氏の支持基盤に対して連帯を示す象徴的なものに過ぎず、クーデター計画疑惑に関する裁判その他のモラエス判事の職務に対して実質的な影響をもたらすものではないとの見方をしているという。(4)
エドゥアルド氏は今回の米国からの制裁をSNS上で喜んだ。だが、同氏の側近は29日付フォーリャ紙に対し、米国でモラエス判事に対する制裁をと働きかけた件で捜査対象となったため、帰国さえできず、2026年の統一選挙のためのキャンペーンも米国で行わざるを得なくなるだろうと話している。(5)
また、エドゥアルド氏の米国滞在を援助するための仕送りを行っていると公言しているボルソナロ氏に対し、最高裁が資産の凍結を命じるのではないかという憶測も浮上してきている。(6)