輸出や雇用に懸念高まる=米国鉄鋼アルミ関税50%で

トランプ大統領は3日、米国における鉄鋼、アルミニウムおよびそれらの派生製品の輸入関税率を、3月12日より適用されていた25%から50%へと大幅に引き上げる大統領令に署名した。新たな関税率は4日から施行され、米国にとって鉄鋼輸入量で第2位の供給国であるブラジルをはじめ、複数の貿易相手国への影響が懸念されている。専門家は、ブラジルの対米輸出は減少が見込まれ、国内鉄鋼業界の生産調整を引き起こすだけでなく、関連産業の雇用情勢にも波及しかねないと指摘している。4日付G1サイトなど(1)(2)(3)が報じた。
今回の関税率引き上げは、4月初旬に導入された大規模な相互関税措置の一環とみなされている。対象国の一部では適用が一時的に停止されていたが、7月8日より全面再開が予定されており、米国は貿易交渉における圧力手段として活用している。
ブラジル国内の製造業者の影響は様々で、国外市場への依存度が高い企業は輸出減少により大きな打撃を受ける一方で、内需中心の企業は影響が相対的に軽微と見られているが、供給過多に伴う価格低下圧力や収益率の低下という新たな課題にも直面している。
ブラジル鉄鋼協会(IABR)は、今回の関税措置に関するコメントを控えているが、3月の25%関税導入時には、両国政府間の対話による輸出円滑化への期待感を表明していた。
米商務省によると、2024年のブラジルの対米鉄鋼輸出は410万トンで、600万トンのカナダに次ぐ第2位。これに320万トンのメキシコが続く。一方、アルミニウムについては、対米輸入全体に占めるブラジル産品の割合は1%未満と小さいが、ブラジル側から見れば米国は重要な市場であり、同年のブラジルからのアルミニウム輸出の16・8%を占めている。なお、米国の鉄鋼需要の約25%、アルミニウム需要の約50%は輸入に依存している。
BMJコンサルティングの国際貿易専門家ジョゼ・ルイス・ピメンタ氏は、ブラジルは短〜中期で米国の輸入減少に直面し、販路の多様化が不可欠だと指摘。一方で、中国という強力な競合国の存在がこの課題を困難にしているとし、余剰品の国内販売という方策も検討すべきであるとしている。
ジェトゥリオ・ヴァルガス財団ブラジル経済研究所(Ibre/FGV)のリア・ヴァルス研究員は、「中国は鉄鋼やアルミニウムの半製品を輸入して最終製品に加工する傾向がある」と説明。「現時点ではブラジルの輸出先がどこになるか、明確ではない」と述べている。
貿易専門家のジャクソン・カンポス氏は、輸出減はブラジルの鉄鋼製造従事者だけでなく、輸送や鉱業などの関連産業の雇用にも悪影響を及ぼす可能性があると警鐘を鳴らしている。