50%関税=144億レの輸出採算不能に=ブラジルのジャガー8州だけで

【既報関連】トランプ米大統領が9日に発表した50%の関税導入により、米国向けの輸出の3分の1を占め、「ブラジルのジャガー」と呼ばれる8州では144億レの輸出が事実上採算不能になると11日付ヴァロールサイト(1)が報じた。
近年のブラジル経済の新たな牽引役という意味でジャガーと呼ばれているのは、エスピリトサント、ミナス、ゴイアス、マット・グロッソ、マット・グロッソ・ド・スル、パラナ、サンタカタリーナ、リオ・グランデ・ド・スルの8州だ。地域市場の発展のために取り組み、地域の資金を運用・管理する金融グループのFutura/Apexパートナーズが商工開発サービス省通商局(Secex)のデータから得た資料によると、これら8州は米国向けの輸出の36%を占めている。
米国向けの輸出に占める割合が高いと関税引き上げの影響も大きくなるが、同グループによると、これら8州では米国向けの輸出144億レ分が実質的に採算不能となるという。
ブラジルの2024年の総輸出額3370億レと比べれば、144億レは大きな金額ではないと見ることもできる。だが、総額の12%の404億レが米国向けで、その36%は145・4億レだと考えれば、これらの州への打撃はかなり大きい。
Futuraの経済担当理事オルランド・カリマン氏は、ブラジルからの輸出は事実上採算が取れなくなるか、まったく成り立たなくなるという。一例はパラナ、リオ・グランデ・ド・スル、サンタカタリーナ、ゴイアスから輸出する牛肉で、現在は1アルーバあたり5500米ドルの肉がほぼ9千米ドルになれば、米国の輸入業者は購入できなくなるという。牛肉輸出が採算不能となることの影響は、国内での飼育頭数が減少した米国側にも大きいはずだが、代替策の有無、供給減によるインフレ加速などの影響が出始める時期や米国民の反応は予測不能だ。(2)
これら8州は対米輸出の36%を占めるが、対米輸出への依存度はブラジル全体の12%より低い平均9%だ。だが、ばらつきも大きく、エスピリトサント州は全体の28・6%を米国に輸出しているのに対し、大豆生産州のマット・グロッソ州は1・5%と低い。
これら8州は対米輸出する品の一部の大部分またはほぼ全てを占める。一例はコーヒーで、24年は輸出総額19億米ドル中、89%の17億ドルがジャガーから輸出された。それ以外でも、鉄鉱石96・8%、パルプ64・8%、牛肉73・8%などの比率が高い。
既に50%関税が適用されている鉄鋼製品は8月からは100%課税となり、採算不能となる可能性があるが、エスピリトサント州は24年、同州の輸出全体の37・1%にあたる11億米ドルの鉄鋼製品を輸出した。
牛肉の輸出停止で各州が失う輸出収入は、マット・グロッソ46・2%、マット・グロッソ・ド・スル42・1%、ゴイアス40・8%とされている。
多くの企業家や市場関係者は50%関税の発表に驚き、戸惑うと共に、雇用や経済活動、インフレなどへの影響への不安も募らせている。(3)(4)
一例は肉や魚介類を扱う業界で、米国向けの輸出やコンテナの契約のキャンセルが相次ぎ、収益の大幅減少が予測されている。農務省は既にブラジル産品を購入してくれる市場の開拓に乗り出している。(5)(6)
今後の為替レートはブラジルの出方や米国内からの反発の有無などで変わるため、全ての業界、業種が先行き不透明感をぬぐえずにいるが、米国にはブラジルから原材料を輸入して加工するなど、ブラジルと取引関係がある企業も多く、50%関税が始まれば、米国国内からも疑問や批判の声が上がるはずとし、外交上の対話による状況緩和を求める声が強まっている。(7)